侵略者を撃つな! 119

 そう、海老名隊員の予言では、数年後再び宇宙人が攻めてきて、その戦争のファーストコンタクトで隊長は戦死することになってます。その原因を作るのがすみれ隊員。それは絶対嫌。あの人は私の命の恩人。やっぱここは私が引かないと・・・

 すみれ隊員は申し訳なさそうに、

「ごめん。それはちょっとムリみたい」

「そっか・・・」

 寒川隊員とすみれ隊員は再び抱き合います。今度は軽く、短く。それが終わると、2人は客席に深く頭を下げました。みんながそれに拍手で応えてます。

 こうしてユタカ&ヴァイオレットの最初で最後のコンサートは終了しました。


 翌日、朝日に照らされたテレストリアルガード基地。そしてここはサブオペレーションルーム。卵型のテーブルに座ってる隊員服姿の日向隊員が緊張してます。実は長期休暇中だった橋本隊員が今日から職務に復帰するのです。

 女神隊員とのファーストコンタクトは成功しましたが、上溝隊員、倉見隊員、寒川隊員とはファーストコンタクトでしくじりました。はたして橋本隊員とはどんな人? うまくやっていけるの? それにはまず最初のあいさつを決めないと・・・

 引き分けの自動ドアが開き、1人の男性が入ってきました。隊員服姿の橋本隊員です。

「おはよう!」

 そのあいさつに、倉見隊員、寒川隊員、女神隊員が応えます。

「おはようございます!」

 日向隊員は慌てて立ち上がり、橋本隊員に深々と頭を下げました。

「お、おはようございます!」

 橋本隊員はその日向隊員を見て、

「おー、君が新入り隊員の日向くんか? 君、人を殺したことがあるんだって?」

 橋本隊員のあまりにもストレートな質問。え、ここでそんな話をするの? 日向隊員は唖然としてしまいました。女神隊員も唖然とします。倉見隊員と寒川隊員はなんとも言えない笑いをこらえます。隊長は遠慮なく苦笑しました。

 橋本隊員は発言を続けます。

「オレも人を殺したことがあるんだ」

 その発言に日向隊員はびっくり。

「え?」

「まだ1歳にも満たない赤ん坊を殺したことがあるんだ。他にもいろいろと殺してる。ここはそんな人でなしでも受け入れてくれるところだ。こんなところ、この世にはほかにはないぞ。おまえ、いいとこに入ったな!

 な~んにも遠慮することないよ。十分活躍してくれ!」

 日向隊員の顔が明るくなりました。

「はい!」

 橋本隊員と寒川隊員が握手しました。隊長はそれを見て、今度は微笑みを浮かべました。倉見隊員も、寒川隊員も、女神隊員も、それを見て安堵の顔を見せました。

 さて、これで日向隊員が心を入れ替えたかと思いきや、実はそうでもないようです。


 その日の午後、ここは日向隊員の私室。中では私服の日向隊員が長髪のウィッグをかぶったところです。

 日向隊員は姿見の鏡を見ました。そこに映った日向隊員は、飛行機事故に遭う以前の日向隊員=金目ひなたそのものです。

 日向隊員はつぶやきます。

「ふふ、怨霊はやっぱ長髪じゃないとね」

 日向隊員はニャッと笑いました。


 今は夜、9時くらいか。ここは住宅街。街灯や住宅の灯である程度明るい道です。今ここを1人の少女が歩いてます。持ってるカバンなどから推測すると、塾帰りのようです。

 顔を見たら、片岡愛美。そう、日向隊員=金目ひなたのかつての友人です。音楽を聴いてるのか、両耳にイヤホン型ヘッドホンが刺さってます。

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