侵略者を撃つな! 118

 すみれ隊員が応えます。

「何を驚いてんの? 今日はあなたと私のコンサートの日でしょ。一緒に歌いましょうよ!」

「ふふ、いいのか?」

「ええ? な~んの問題もないでしょ!」

「ありがと。じゃ、行こっか!」

「うん!」

 2人は歩き始めました。


 ここは小ホール。舞台上手から人影が現れました。ギターを抱えた寒川隊員です。客席の女神隊員はそれに気づき、

「来た!」

 と、日向隊員は何かに気づきました。

「あれ?」

 先に入ってきた寒川隊員の後ろにもう1つ人影があります。それはすみれ隊員でした。日向隊員と女神隊員が騒めきます。

「ええ~!」

 日向隊員は女神隊員に振り向き、

「すみれさんだ。すみれさんが来てくれたんだ!」

 女神隊員が応えます。

「うん、あなたのテレパシーのおかげね!」

 私のテレパシーが届いたんだ! 日向隊員の喜びはひとしおです。

 場内まばらな拍手。寒川隊員がマイクスタンドのマイクを握り、マイクの高さを調整し、発言。

「ああ、みんなありがと! 今日は思いっきり歌います!」

 寒川隊員はジャーンとギターを鳴らしました。コンサート開始です。

 それから寒川隊員は思いっきりギターをかき鳴らし、すみれ隊員は尾崎豊の曲を熱唱しました。少人数のせいか最初は静かだった観客も、いつのまにやら大興奮。日向隊員はそれを見て、

「ほんとうに、ほんとうにすみれさんの歌声にはものすごい迫力があるんだ。すごいよ! ほんとうにすごいよ!」


 熱狂の中時間は過ぎ、いよいよ最後の曲になりました。寒川隊員のMC。

「ああ、もう時間になりました。もったいないけど、次の曲が最後になります」

 日向隊員はそれを聞いて、ちょっと残念そう。

「あ~ もうおしまいか・・・」

 すみれ隊員。

「今から歌う歌は、私にとってとても大切な曲です。私はこの曲を聴くまでとても我がままな女でした。でも、仲間からこの曲を贈られ、私は心を入れ替えることができました。

 その人のために歌います!」

 日向隊員はあっと思いました。

「え、それって・・・」

 女神隊員は微笑み、

「大切な仲間って、きっとあなたのことよ!」

 日向隊員は眼を輝かせます。

「うん!」

 ジャーン! イントロが始まりました。すみれ隊員は歌います。僕が僕であるために 観客もみんなで大合唱。もちろん日向隊員も合唱してます。日向隊員の両眼から涙があふれ出ています。けど、日向隊員は涙をぬぐいません。

 日向隊員はクラスメイトをイジメて自殺に追い込みました。最初のうちはあまり気に留めてませんでしたが、そのことで弟が殺され、父と母にひどい迷惑をかけ、やっと事の重大さに気づきました。今は反省の日々。この曲はそんな日向隊員の心の傷を癒してくれる曲でもあるのです。

 曲が終了しました。壇上で寒川隊員とすみれ隊員がきつく抱き合いました。拍手が響きます。とても少人数とは思えない拍手の渦です。日向隊員も女神隊員も拍手します。

 寒川隊員は身体を離しました。

「ありがとう。君のお蔭でいいコンサートになったよ」

「いいえ。すべてあなたの実力よ」

「これからも一緒にやって欲しいんだけど・・・」

 すみれ隊員は考えました。そして思い出しました。海老名隊員に言われたあの言葉を。

「隊長はあなたのせいで戦死するの。全部あなたがいけないのよ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る