侵略者を撃つな! 113

 歌が始まりました。歌ってるのは女の子です。そう、日向隊員が思い浮かべてるメロディと日向隊員の歌声がテレパシーとなって寒川隊員の脳に届いてるのです。

 寒川隊員は自然にその曲を歌い始めました。ユラン岡崎はそれを聞いて一瞬はっとしますが、彼も同じテレパシーをキャッチしたようです。自然に同じ曲を歌い始めました。その歌を聞いてすみれ隊員はびっくり。

「え?」

 女神隊員も驚いてます。

「いったい何が起きてんの?」

 隊長はその女神隊員を見ました。

「あんたの耳にも届いてんのか、この歌声?」

「はい!」

 それはすみれ隊員の脳にも届いてるようです。すみれ隊員は動揺し始めました。両手で持っていたレーザーガンを右手だけで保持し、左手で左耳を押さえました。

「な、なんなの、これ!? やめてよ・・・」

 すみれ隊員も心の片隅では、自分の仇討ちという行為に疑問を持ってました。けど、今は仇討ちを達成する方が何倍も、何十倍も、何百倍も大事。その疑問は完全無視されてました。ですが、この曲を聴いて疑問の方が優先になってきたのです。

 曲はサビの部分になりました。そして・・・

 正しいことはなんなのか? このフレーズを聴いてすみれ隊員は頭を抱え、泣き出してしまいました。

「うわーっ!・・・」

 隊長はすみれ隊員に近寄り、その手から優しくレーザーガンを取りました。ユラン岡崎はそれを見て、

「いいのか、すみれ? オレを許してくれるのか?」

 けど、すみれ隊員はただひたすら泣き崩れてるだけ。そのすみれ隊員を介抱してる隊長はユラン岡崎を見て、

「もういいだろ。頼む、行ってくれないか!?」

 ユラン岡崎はちょっと考え、

「わかった」

 ユラン岡崎は真上を見上げました。すると光が降り注いできました。その光を浴びてユラン岡崎の身体がふわっと上昇を開始しました。隊長はそれを見てつぶやきました。

「ふ、あの宇宙船、律儀に待っててくれたのか?・・・」

 ユラン岡崎の姿がふっと消えました。と同時に昇降機の光が消えました。隊長はそれを見て、

「ふ、行ったか」

 寒川隊員はすみれ隊員を介抱します。

「しっかりしろ、すみれ」

 けど、すみれ隊員は泣き崩れたままでした。


 太陽は高いところにあります。ここはテレストリアルガード基地に唯一となってしまった格納庫。今引き分けの巨大な扉が開いてます。巨大な扉なのに、音はまったくありません。

 格納庫の前には隊員服姿の日向隊員がいます。日向隊員はこの可動中の扉を見て、唖然としてます。

「ええ、なんで? なんで音がしないの?」

 この日向隊員の横には香川隊長が立ってます。隊長も隊員服姿。スマホを手にしてます。どうやら電話をしてるようです。

「どうだ?」


 ここは地下通路。1人の男性がスマホの電話に出てます。

「騒音も振動もありません」

 ちなみに、この男性はテレストリアルガードの一般職員です。


 再び格納庫前。スマホで電話をしてる隊長。

「了解! もう帰っていいぞ!」

 隊長はスマホを握る手を降ろし、日向隊員を見ました。

「聞いての通りだ」

 思わぬ結果に日向隊員は慌てます。

「そ、そんな~ 私は聞いたんですよ。この扉がブォーンときしむ音を。振動もすごかったし・・・」

「聞いたといっても、夢の中だったんじゃないのか?」

「たしかに最初の3回は夢でしたよ。けど、最後の1回は完全に現実リアルでした! そうじゃないと辻褄が合わなくなるんですよ! 私が叩き起こした女神さんがちゃんと現場に行ったんですから!」

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