侵略者を撃つな! 111
ユラン岡崎の話が続いてます。
「そいつの話だと、別の惑星を侵略するために集められたリントブルム星人が反乱を起こし、丸ごと宇宙傭兵部隊ヴィーヴルに入隊した。そこでリントブルム星人たちは目覚ましい活躍を見せ、それを認めてくれたヴィーヴルは、惑星リントブルム独立に手を貸してくれることになった。
オレはそれを聞いて舞い上がりたい気分になった。そしてその独立戦争に参加させてくれと懇願した。もちろん応えはOKだった。
が、なかなか迎えは来なかった。どうやらリンドブルム星人が参戦してる戦争が思ったより長引いてるようだった。だが、定期的に伝わってくる情報によると、その戦争は終結間近。あともう少し、あともう少しで独立戦争に参加できる。オレは期待に胸を弾ませていった。
そんなときだった。バイトの帰りだったな・・・」
ユラン岡崎の記憶の中、半繁華街半住宅街て感じの通りを歩くユラン岡崎。服装的にはふつーの地球人。かつらや付けヒゲなどの変装はありません。時刻は夜10時くらいか。と、突然ユラン岡崎に声がかかりました。
「お、おい、お前・・・」
ユラン岡崎がその声の方を向くと、そこには自転車に跨った男性の姿が。
「お前、生きてたのか?・・・」
それはすみれの父親でした。
現在のユラン岡崎は、押さえつけられているすみれ隊員を見て、
「君の父親と偶然街で逢ったんだ」
ユラン岡崎の記憶の中、すみれの父親は自転車を降りると、笑いながら語りかけてきました。それを聞いてユラン岡崎は顔を赤らめました。
「え、ええ、まあ・・・」
彼はうれしそうだった。オレも命の恩人に数年ぶりに逢えてとてもうれしかった。けど、それ以上に言い知れぬ不安が襲ってきたんだ。
オレはいつヴィーヴルから迎えがくるのかわからない状況だった。なのにここでこの男に通報されたら、オレのリンドブルム星独立戦争参戦はおじゃんになってしまう・・・ それだけはなんとしても避けたかった」
ユラン岡崎の記憶。夜のドブ川沿いを歩くユラン岡崎とすみれの父親。すみれの父親は自転車を押してます。現在のユラン岡崎の声。
「オレはあの人を郊外のサイクリングコースに誘いこんだ」
鉄道のガード下に2人が入ります。と、上の線路に電車が走ってきました。現在のユラン岡崎の声。
「線路のガード下に来ると、電車が来た。それはオレにとっちゃ絶好のチャンスだった!
オレは足下に落ちてるコンクリートブロックを手にすると、あの人の顔をコンクリートブロックで殴った。何回も何回も殴った」
ユラン岡崎はコンクリートブロックをドブ川に投げ捨てると、駆け出しました。
現在のユラン岡崎。
「今考えてみればひどい話だ。オレはあの人がいなければ死んでたはずなのに、そんなに恩のある人を平気で殺しちまったんだ。
オレはこの1ケ月、ずーっとずーっとそのことで悩んでた。このままじゃ一生残るトラウマになりそうだ。ちょうどいい、もう清算しよう」
ユラン岡崎はすみれ隊員を抑え込んでいる隊長を見ました。
「自首します」
それを聞いて寒川隊員はあせりました。寒川隊員は知ってます。逮捕された宇宙人は、公安7課に身柄を拘束され、どこかに消えてしまうことを。それは避けないと!
当然隊長もそれを知ってました。で、こんな発言をしました。
「それはムリだな」
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