侵略者を撃つな! 104

「あっ、そうだ、忘れてた・・・」

 そうです。日向隊員のエアジェットエンジンのスピードは、クレイン号やすみれ隊員のそれと比べるとちょっと下。クレイン号やすみれ隊員が一定以上スピードをあげると、ついて行けなくなるのです。それでも日向隊員の顔には余裕があります。

「ふ、どうせ行くところはわかってるんだ。あれに間に合えば・・・」

 東の空が明るくなってきました。


 ゴルフ場が見えてきました。あるホールのフェアウェイにクレイン号着陸。クレイン号から2つの人影が降り立ちました。隊長と寒川隊員です。

 2人は木立を抜け、隣りのホールのグリーンに立つ複数の人影を見ました。距離にして400mくらい。隊長は双眼鏡を取り出し、それを利用して人影の数を数え始めました。

「1、2、3・・・ おいおい、全部で10人いるじゃないか? 公安7課は日本にいるリンドブルム星人は7人と言ってたが、3人も見逃してたのか?」

 突然10人の頭上に宇宙船が現れました。クレイン号を2周り大きくしたような大きさ。隊長はそれを見て、

「あちらさんもちょうど今到着か。これ以上近づくとこっちの存在を体温で検知されるから、こっから監視することにしよう」

 2人は身を低くしました。

 宇宙船から真下に光が放たれました。その光に10人全員の身体が浮上し始めました。隊長はそれを見て、

「おいおい、10人全員同時に吸い上げることができるのか? やっぱ向こうの技術はすごいなあ・・・」

 寒川隊員も双眼鏡で10人を見てます。その中には寒川隊員がよく知ってる顔もありました。変装してないユラン岡崎です。寒川隊員はぽつり。

「ユランさん・・・」

 と、ここで1つの人影が針葉樹林の上にこつ然と現れました。人影は10人に突っ込んでいきます。

「うおーっ!」

 隊長はその人影を見て、びっくり。

「す、すみれ?」

 そう、その人影はメガヒューマノイドに変身したすみれ隊員だったのです。

 すみれ隊員はサングラスの男性(公安7課の捜査員)が提示した写真の5人の中に犯人がいると思い、5人全員殺す気でここに来ました。けど、今眼の前にいるリンドブルム星人は10人。こうなると犯人の可能性は8人になります。しかも公安7課がアリバイを証明した2人の顔は知りません。すみれ隊員の頭は一気に混乱状態におちいりました。

「じゅ、10人?・・・ くっ!」

 こうなったら10人全員射殺しないと・・・ すみれ隊員はレーザーガンを一番手前にいたリンドブルム星人に向けました。

「父の仇、死ねーっ!」

 ターゲットにされたリンドブルム星人の顔がひきつります。

「や、やめろーっ!」

 寒川隊員が叫びます。

「やめるんだ、すみれーっ!」

 すみれ隊員の銃爪ひきがねにかかる指が引かれました。光弾発射。が、これと同時に、何かがすみれ隊員の背中に抱き付きました。

「ダメっ!」

 発射された光弾は、リンドブルム星人とリンドブルム星人の間をすり抜けていきました。

 すみれ隊員に抱き付いた人影は日向隊員でした。隊長はそれを見て、

「日向?」

 すみれ隊員はもがきます。

「くそーっ、離せ!」

 すみれ隊員は激しくきりもみ飛行。すみれ隊員の両耳は義耳。三半規管も人工のもので、平衡感覚は常人をはるかに超えてました。

 一方日向隊員の三半規管は元からあるもの。平衡感覚は常人と同じ。日向隊員は眼を廻してしまいました。空間識失調バーティゴを起こしてしまったのです。

「うわっ・・・」

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