侵略者を撃つな! 105

 日向隊員はすみれ隊員の身体を掴む手を離してしまいました。日向隊員の身体は地面に向かってまっしぐら。ここで日向隊員は思いました。

「このあと私は、すみれさんに頭を蹴飛ばされ、首が飛んでっちゃう。それさえ回避できれば・・・」

 が、次の瞬間、日向隊員の顔がひきつりました。地面がもうそこにあるのです。日向隊員は思わず悲鳴をあげました。

「うわーっ!」

 グシャーッ! 日向隊員の身体は地面に激しく激突しました。


「きゃーっ!」

 日向隊員はけたたましい悲鳴をあげ、跳ね起きました。ここは日向隊員の私室、ベッドの上です。日向隊員はパジャマを着てます。日向隊員はつぶやきました。

「ええ、また夢? なんなの? 夢の中でまた同じ夢を見たっていうの? そんなことあんの?」

 と、ここで日向隊員ははっとしました。ベッドの脇のサイドチェストの上のティーカップがカタカタと音を立てて鳴ってるのです。さらに部屋にはグオーンという重低音が響いてます。日向隊員は唖然とします。

「ええ~・・・

 これって格納庫の扉の音だよね?・・・ これも夢なの?」

 日向隊員は自分のほおをつねりました。すると、

「いたっ!

 夢じゃない?・・・ 」

 日向隊員は誰かに導かれるようにベッドを降り、自動ドアを開けました。


 テレストリアルガード基地の地下通路を歩く日向隊員。と、日向隊員の進行方向にすみれ隊員が現れました。

「またすみれさんとここで会った・・・」

 日向隊員はさっと物陰に隠れました。すみれ隊員は廊下の角を曲がり、奥へ歩いていきます。服装は隊員服。日向隊員は反射的にすみれ隊員を尾行し始めました。


 真夜中のテレストリアルガード基地滑走路。クレイン号が今すーっと浮上を始めました。

 これを地上から見ている人影があります。すみれ隊員です。すみれ隊員はテレストリアルガード基地に唯一あるビルの陰からクレイン号を見てました。

 すみれ隊員の顔を見ると、かなりきつい眼をしてます。すみれ隊員は数時間前の寒川隊員の発言を思い出してます。

「今朝早くユランさんは母星に帰ったよ。ほかのリンドブルム星人も一緒に帰った」

 そして心の中で発言。

「そんなの、信じるか!」

 このすみれ隊員の背後、ちょっと離れた箇所に日向隊員がいます。

 クレイン号が空中停止。ジェットエンジン始動。クレイン号は今度は横に動き始めました。

 一方地上のすみれ隊員は振り返り、走り出しました。日向隊員はそのすみれ隊員を眼で追いかけます。

 すみれ隊員は格納庫のような巨大な屋内駐車場の木戸のような小さな外開きドアに到達。手にしてたカードキーをタッチパネルにタッチ。カチャッという音。そのままドアを開け、屋内駐車場の中に消えました。

 日向隊員はそれを目視すると、彼女もそのドアに向かって駆け始めました。


 ドアはドアクローザーによって自然に閉まりかけてます。完全に閉める寸前、日向隊員が到着。ドアノブを掴み、再びドアを開けました。

 日向隊員はドアのふちに立ち、駐車場の中を見ました。中は暗いですが、いろんな機械のパイロットランプがついてるせいか、完全に真っ暗てわけではありません。

 左からカチャッという音。日向隊員は建物内にちょっと顔を入れ左側を見ると、すみれ隊員が壁の方を見てました。と、すみれ隊員は壁に手を伸ばし、何かを掴みました。クルマの鍵です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る