侵略者を撃つな! 89

 隊長は今度はサングラスの男性に話しかけました。

「珍しいですねぇ、公安7課がうちに直接来るなんて。なんの御用ですか?」

「昨日捜査1課の刑事がここに来ましたね、2人」

 隊長は昨日この部屋に訪れた園田刑事と芹川刑事を思い出しました。

「あ~ 来ましたねぇ」

「その2人が担当していた殺人事件ですが、我々公安7課も捜査することになりました」

「ええ、公安7課が殺人事件を?」

「説明しましょう。

 以前捜査1課からデータベースへのアクセスの依頼がありました。殺人事件の被害者のDNA型の調査のためでした。しかし、我々公安部のデータは高度な秘匿性があります。たとえ捜査1課の捜査であっても、接続させるわけにはいきません。我々公安7課は一度は断りました。

 しかし、捜査1課の捜査はなかなか進展しなかったようです。もう一度捜査協力を依頼してきました。彼らは今度はすべての捜査資料を提示してきました。その中に謎のDNA型がありました。

 捜査1課は植物か何かのDNA型だと思ってたようですが、我々が調べたところ、それは宇宙人のDNA型でした」

「う、宇宙人?・・・ それで公安7課も捜査することに?」

「ええ。ま、宇宙人てところは捜査1課には伏せてますが」

「ふふ、実質公安7課の単独捜査ですか?」

「ま、そんなとこです。

 さっそく被害者のDNA型を調べてみたところ、身元はすぐに判明しました」

 サングラスの男性はすみれ隊員を見て、

「もうすでに聞いてると思いますが、被害者はそこに座ってる黒部すみれ隊員の父、豊原辰巳さんでした」

 それを聞いていつもは感情を表に現すことがない、いや、現すことができないすみれ隊員は、唖然とした表情を見せました。それを見て隊長は「しまった!」と思いました。隊長はサングラスの男性に手をかざしました。待っての意思表示です。

「あっ、ちょっと待ってください」

 隊長は今度はすみれ隊員を見て、少し頭を下げました。

「すみれ、すまん。昨日君の父親が1ケ月前に殺されていたという連絡を受けていた。けど、昨日の今日で、まだ君には伝えてなかった」

 しかし、すみれ隊員のうろたえた表情は変わりません。今度は隊長が表情を崩してしまいました。苦虫を噛み潰したような表情です。サングラスの男性はそれを見て、

「香川さん、話を止めましょうか?」

「あ~ そうしてもらえると嬉しいです」

 が、すみれ隊員はここで珍しく言葉を発しました。

「話を続けてください!」

 隊長はすみれ隊員の顔を見て、

「いいのか?」

 すみれ隊員はうなづきました。隊長はすみれ隊員の眼を見て覚悟を感じました。隊長はサングラスの男性を見て、

「話を続けてください」

「わかりました。

 犯人のDNAですが、リンドブルム星人てところまではわかってます」

「リンドブルム星人・・・」

 隊長の脳裏にユラン岡崎の顔が現れました。まさか、あの男?・・・

 サングラスの男性の発言が続きます。

「リンドブルム星人はこの国に7人いることが確認されてます。本来なら7人とも24時間体制で監視すべきなのですが、残念ながら人員がまったく足りてなくて・・・ 緩やかに監視するしかない状況にあります。

 7人のうち2人は当日、我々の監視下にありました。この2人にはアリバイがあります。残るリンドブルム星人は5人」

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