侵略者を撃つな! 88

 そこに日向隊員がやってきました。日向隊員はすみれ隊員の真横に立ちました。2人の身体は2台のワンボックス車の方に向いてますが、日向隊員は横眼ですみれ隊員を見てます。

「私たち、これで毎日飛べますね」

 すみれ隊員はその言葉に何も反応しません。日向隊員を嫌がる素振りもありませんでした。これは私を嫌ってないな。日向隊員はちょっと安堵しました。

 と、今度は隊長が来ました。

「すみれ、行くぞ!」

 隊長はすみれ隊員を連れて行ってしまいました。日向隊員はそれを見送ると、今度は寒川隊員を見ました。

「じゃ、私もこれで」

 日向隊員は1歩踏み出します。が、

「日向ちゃん!」

 その寒川隊員の呼びかけに反応して立ち止まりました。寒川隊員は言葉を続けます。

「オレの歌、また聴いてみないか?」

 日向隊員は寒川隊員を見てにこっと笑うと、

「考えておきます」

 日向隊員も行ってしまいました。それを見送る寒川隊員。頭の中で、

「こりゃ、聴く気がないな」

 と、苦笑い。次の瞬間、寒川隊員の胸のポケットから電子音が。寒川隊員ははっとします。

「ん?」

 寒川隊員が胸のポケットから小さな何かを取り出しました。それはスマホでした。寒川隊員はスマホの画面を見ます。

「メール?」

 次の瞬間、寒川隊員の顔がパッと明るくなりました。

「ユランさんだ!」


 ここはサブオペレーションルーム。この部屋に設置されてるコーヒーメーカーのボタンがたった今押されました。コーヒーカップを満たしていくコーヒー。このコーヒーカップを受け皿に載せる手。上溝隊員の手です。と、上溝隊員は手を滑らせてしまい、カチャッと大きな音を出してしまいました。上溝委員は慌てて謝罪します。

「あっ、ああ・・・ す、すみません」

 けど、卵型の大型テーブルに1人座ってる男性はピクリとも動きません。男性はかなり立派な身体をしており、スーツを着てます。濃い色のサングラスをかけてるせいか、表情はいまいちわかりません。

 上溝隊員は今度はコーヒーカップを男性の前に置きました。さらにコーヒーカップの脇にクリームと砂糖を置こうとします。けど、サングラスの男性はそれを掌でさえぎるジェスチャーをして、こう言いました。

「No Thank You!」

 上溝隊員は慌てて手を引っ込めました。

「す、すみません」

 上溝隊員は心の中で叫びました。

「もう、隊長、早く帰ってきてよ! 私、こういう人、苦手!」

 と、ここで引き分けの自動ドアが開き、隊長とすみれ隊員が入ってきました。上溝隊員はそれを見て安堵の顔。心の中でこうつぶやきました。

「や、やっと帰ってきた・・・」

 サングラスの男性は立ち上がり、隊長と握手。

「どうも。公安7課の者です」

 隊長は応えます。

「どうも。テレストリアルガード作戦部門隊長香川です」

 上溝隊員は自動ドアを開け、振り返ってあいさつ。

「私はこれで失礼します」

 上溝隊員は逃げるように退室しました。廊下に出ると上溝隊員はこわばった表情を崩し、はーっとため息をつきました。

「はー、しんどかったあ・・・」


 再びサブオペレーショルーム。隊長が卵型のテーブルにサングラスの男性と相対するように座りました。隊長はふと横を見ると、すみれ隊員は立ったままでした。隊長は隣りのイスを引いて、

「すみれ、ここに座れ」

 すみれ隊員は無言のまま、そのイスに座りました。

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