侵略者を撃つな! 87

 クレイン号機内、乗務員席から見た地上の南原主幹。南原主幹は手を振ってます。それを機内から見ている日向隊員。彼女の2つ後ろの席にはすみれ隊員の姿もあります。すみれ隊員は納得した顔をしてます。

 今回も操縦席には隊長と寒川隊員が座ってます。寒川隊員が隊長に話しかけます。

「隊長、うちの基地ですみれを飛ばす気ですか?」

「ふ、まあな」

「いいんですか? あんなところで飛ばしたら、周囲の人に丸見えですよ」

「まあ、弁護士の城所にメガヒューマノイドの秘密をバラされちまったし、最近じゃ田村佐恵子もメガヒューマノイドだったと周知されたし、今更隠す必要もないだろ。ヘルメットのシールド降ろして顔を隠せば十分じゃないか?

 けど、お前にはちょっと不都合かもしれないな。今は一刻も早く一緒に歌いたい気分なんだろ」

「ええ、まあ・・・

 けど、あいつが納得しないと、まともに歌ってくれないような気がするんです」

「ふ、お前には珍しく、殊勝な心掛けじゃないか」

「ええ、珍しいんですか?」

「ふっ」

 隊長はちょっと微笑みました。そして命令モードに。

「じゃ、そろそろ行くか」

「はい」

「ジャンプ!」

「了解!」

 コックピットの窓の外が一瞬ピカッと光りました。次の瞬間窓の外は、テレストリアルガードの基地になってました。操縦席の寒川隊員がコンソールのモニターを見て、

「ジャンプアウト完了! チェック、オールグリーン! 問題ありません!」

 隊長が命令します。

「着陸地点に移動!」

「了解!」

 クレイン号が移動を開始しました。反重力エンジンを使ってるので、無音でゆっくりと移動して行きます。

 副操縦席の隊長が寒川隊員を横目で見て、

「やはりお前には話しておいた方がいいな。さっきの電話だが、すみれに会いたいと言ってきた人は公安7課の人だ」

「ええ、公安7課? あいつの親父おやじの件ですか?」

「いや、それは捜査1課の仕事だろ」

「じゃ、なんの目的で?」

「さあな、公安はなんでも秘密にしたがる組織だからな、オレもわからんな。ただ、公安7課は宇宙人担当の部署。テレストリアルガード警察支部と呼ばれてるところだ。何か宇宙人絡みの話であることは間違いないな」

 寒川隊員はユラン岡崎を思い浮かべ、心の中で発言しました。

「宇宙人?・・・ まさかユランさんのこと? いや、ユランさんのことなら、オレに連絡してくるはず。すみれに来るはずがないか・・・」

 隊長の発言が続きます。

「ともかく話はサクッと終わらせて、それから気が済むまですみれを飛ばす予定だ。それからお前に引き渡す。悪いが、それまで待ってくれ」

 滑走路に着陸したクレイン号。今お尻の巨大なハッチが開けられており、そこから2台のワンボックス車が降ろされてます。それをすみれ隊員と寒川隊員が傍らから見ています。

 ワンボックス車はすみれ隊員をメガヒューマノイドに変身させてくれる重要なガジェット。すみれ隊員は珍しく眼を輝かせて作業を見ています。

 寒川隊員はそんなすみれ隊員を心配顔で見ています。寒川隊員とすみれ隊員は近々バイオレット&ユタカという名前でコンサートを行う予定になってます。一刻も早くリハーサルを行いたい気分なのです。

 しかし、すみれ隊員の今の興味は、メガヒューマノイドになって空を飛ぶこと。もう歌ってくれないのでは? 寒川隊員は気が気ではないのです。

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