侵略者を撃つな! 79
勝ち続けなきゃならない。その歌詞は1番にもありました。なるほど、確かに「自分自身に勝ち続けなきゃならない」と解釈すれば、すべてがしっくりします。
自分が自分であり続けるために、自分に勝ち続けなきゃならない。私は・・・ 私は山際怜子の兄をみにくいと感じた。しかもそれをネタに、山際怜子を
日向隊員の眼から涙があふれてきました。寒川隊員はそれを確認しました。こうなった場合、たいていの歌い手は歌を止めるのですが、寒川隊員は逆でした。
「ふふ、感動してる、感動してる」
と思い、そのまま歌い続けました。
寒川隊員が歌い終わりました。で、泣いてる日向隊員を見ました。
「どうした?」
日向隊員は右手の指で目頭を押さえてます。
「あは・・・」
ふふふ、マジで感動してるな。さすが尾崎豊。う~ん、もっと聴かせたいけど、このへんでやめておいた方がいいかな? 寒川隊員はそう判断すると、口を開きました。
「今日はここまでにしよう。もうお帰り」
「はい」
日向隊員はとぼとぼと会議室を出ていきました。
地下廊下を歩く日向隊員。もう涙は止まってますが、しょんぼりとしてます。日向隊員は思いました。
「尾崎豊か。どんな人だったんだろう・・・」
日向隊員はピアノを習ってました。そのせいで日本の懐かしいポピュラーミュージックもかなり知ってました。けど、尾崎豊は本当に知らないアーティストだったのです。
と、日向隊員の足がぱたりと止まりました。日向隊員の部屋のドアが開いてるのです。
「あ、あれ? ドアが開いてる?」
日向隊員は慌てて部屋の中に入りました。そこには1つの人影が。隊長です。
「こらっ、日向! どこに行ってた?」
「あ、あの~ ちょっと見学に・・・」
「何が見学だよ。勉強しろって言ったろ!」
日向隊員は応えに窮してます。隊長が先に発言。
「仕方がないなあ。教科書持ってオレについて来いよ」
まるで教育ママ。日向隊員は苦笑いするしかありませんでした。
ここはサブオペレーションルーム。引き分けの自動ドアが開き、隊長が入ってきました。奥のイスに座り、レーダーなどをモニターしてた上溝隊員が振り返りました。
「あ、隊長、お帰りなさい・・・」
と、上溝隊員は隊長の背後に日向隊員を確認しました。とたんに上溝隊員の眼はきびしくなり、視線をはずしました。上溝隊員はまだ日向隊員を許してないようです。
隊長は卵型のテーブルのイスの1つを見て、次に日向隊員を見ました。
「ここに座れ」
「はい」
日向隊員はそのイスに座りました。隊長もその隣のイスに座りました。
「今日からオレが教えてやるよ」
「ええ~ 隊長、大丈夫ですか?」
「ふっ、簡単、簡単。オレを誰だと思ってるんだ? テレストリアルガードの隊長だぞ!」
というわけで、個人授業が始まりました。が、隊長はすぐに自分の限界に気づいてしまいました。小6が習う勉強の範囲(学習指導要領)はたかが知れてると思ってましたが、実際教えてみたら想像以上に広範囲だったのです。それでもなんとか初日は、日向隊員に勉強を教えることができました。
「よし、今日はここまでにしよう!」
「はい」
日向隊員は教科書をまとめ、それを持ってサブオペレーションルームを出て行きました。
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