侵略者を撃つな! 63

 が、金目家の3人はガン無視。そのまま行ってしまいます。男は慌てて、

「おい、ちょっと待ってくれよ! あんた、かつ丼100人前注文したろ。それなのにガン無視かよ! ちゃんと金払ってくれよ!」

 警官隊の一番後ろにいた私服警官がその男を見ます。

「あの人はずーっと私と一緒にいた。そんな電話はいっさいかけてないぞ」

「んなアホな!」

「通常100人前の注文なんてありえんだろ。ちゃんと確認の電話は入れたのか?」

「もちろん!」

「そっか・・・ 相手の電話番号は?」

「えっ? ええ~と、たしか050・・・」

「ふっ、050・・・ そいつは典型的な詐欺が使う電話番号だな。そんなのもわからんで、よく出前やってんな」

「え、詐欺?・・・ ど、どうしよう。かつ丼100人前の代金を回収しないと、オレのバイト代は・・・」

 この会話を聞いてたやじ馬の1人が、金目ひなたの背後を見ます。

「おい、金目、かつ丼買ってやれよ! どうせ金があり余ってんだろ!」

 ほかのやじ馬が呼応します。

「あんたら、本当に血が通ってないんだな!」

 さらに、ほかのやじ馬が、

「おい、みんなでかつ丼買ってやろーぜ!」

 大勢のやじ馬がそれに反応します。

「おーっ!」

 かつ丼を出前に来た男は涙目になります。

「あ、ありがとう・・・」

 と、この男の背後で軽のワンボックス車が停車しました。どう見てもピザ店のワンボックス車です。運転席と助手席のドアが開き、それぞれ1人ずつ降りました。2人は人だかりを見て唖然。

「ええ・・・」

 そして一呼吸置いて発言。

「あ、あの~ ピザ100枚お届けに参りました・・・」

「はぁ~?」

「またかよ・・・」

 やじ馬たちは呆れてしまいました。


 金目家のリビング。外は昼ですが、雨戸を閉め切ってるせいか、室内は薄暗い状態。欄間らんまから光が差し込んでます。今ドアが開き、金目ひなたと両親が入ってきました。

 金目ひなたはテレビのリモコンを持ちました。テレビをつけるつもりです。けど、父親の、

「やめろ!」

 の一言で、その手を止めました。父親はさらに発言します。

「今はテレビなんか見るな! インターネットもするな! じっとしてろ!」

 金目ひなたは考えました。そして何も言わずに退室しました。


 ここは金目ひなたに与えられた部屋。この部屋には欄間らんまがないせいか、リビングよりもさらに薄暗くなってます。金目ひなたがベッドに力なくダイブしました。

 父からインターネットをするなと言われてる金目ひなたですが、禁止されるとかえって見たくなるものです。金目ひなたはスマホを取り出すと、あの掲示板を開きました。

 そこには自分に対する罵詈雑言しか書いてませんでした。特にショックだった単語が「ブス」。

 金目ひなたは誰もがうらやむほどの美少女です。それで多くの人にちやほやされてました。今まで一度も「ブス」と言われたことがなかったのです。それなのにここに書き込まれた自分を示す言葉は「ブス」だけ。

「私はブスじゃないよ・・・」

 金目ひなたは絶望してしまいました。

 金目ひなたは今度はワンセグのテレビを見ました。そこには2人ぶんの少女の足が映ってました。そして2人分の加工された声が。

「私たちもいつもあの女にカツアゲされてました」

「私たちから取れるお金がなくなったら、今度は山際れいちゃんからカツアゲしようて言い出して・・・ しかたなく私たちもカツアゲを手伝ったんです」

「私たち、本当にあの女が怖かったんです」

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