侵略者を撃つな! 62

 ヘリコプターに乗ってるリポーターの声が響きます。

「パトカーの中には例の少女と両親が乗ってます。先ほどまで警察署にいました。警察に呼ばれた理由ですが、クラスメイトをイジメて自殺に追い込んだ事件の取り調べと思われましたが、別件だったようです」


 ここは巨大な駐車場の端っこに建ってるラーメン店。店内は油汚れ等、少々経年劣化が目立ってます。今2人がテーブルに座ってラーメンを食べてます。2人とも服装からしてトレーラートラックの運転手のようです。

 1人がラーメンを食べながら横目でテレビを見ました。テレビの中はヘリコプターのテレビカメラが捉えてるパトカーが映ってます。

「ん? あのクソガキ、まだ逮捕されてないのか?」

 もう1人もラーメンをすすりながら応えます。

「小学生じゃ、直接手を下してなけりゃ、逮捕されることはないだろって。それに金目ひなたの父親は高級官僚キャリアだろ。そんな子を逮捕したら、警察のお偉いさんは左遷になるんじゃねーの?」

「上級国民様は人を殺しても絶体逮捕されないかあ・・・ いいなあ、オレも上級国民になりたいなあ・・・」


 テレビの中はテレビ局のスタジオに切り替わってます。ワイドショー番組のMCの発言。

「え~ たった今新しい情報が入りました。

 先ほど起きた、駅のホームで高校生が小学生の男の子を突き飛ばし、男の子が電車に轢かれて死亡した事件ですが、被害者は例の少女の弟だったようです!」


 ラーメン店でラーメンを食べてる男の1人がそれを聞いてケラケラと笑い始めました。

「あはは、そっかぁ~ そいつはざまぁだな!」

 もう1人がそれをたしなめます。

「おいおい、それはいくらなんでも言い過ぎだろって!」

「構うことないさ。たまには上級国民様も痛い目に遭わないと! 神様、グッドジョブだぜ。がははは!」

 いくらなんでもこの発言は・・・ もう1人の男はこの男に不快な視線を向けました。


 金目家の家の前は相変わらずたくさんのカメラクルーやマスコミの記者ややじ馬が取り囲んでます。そこにサイレン音。皆が振り向くと、ちょっと離れた位置に3台のパトカーが停まりました。やじ馬たちは一斉にスマホやゴープロを一斉に向けます。もちろん、テレビ局のカメラクルーもテレビカメラを向けました。

 まず前後のパトカーから数人の警官が降ります。続けて真ん中のパトカーから父親が降ります。さらに父親の陰に隠れて金目ひなたがパトカーを降りました。テレビ局の女性リポーターがそれを見て、マイク片手に発言します。

「たった今、例の少女が帰ってきました!」

 さっそく3人と警官隊の周りをカメラクルーややじ馬たちが囲みます。リポーターの矢継ぎ早の質問が飛びます。

「今どんな気持ちですか?」

「公の場に出て、あらためて謝罪する気はあるんでしょうか?」

 さらにやじ馬の罵声。

「おらっ、金目ーっ! 責任取れよ!」

「やっちまうぞ、金目ひなた!」

 金目家の3人と警官隊はそれを無視してゆっくりと進みます。大混雑。やじ馬たちは身動きが取れません。が、1人が必死になって人をかき分けてます。服装からして、蕎麦屋かトンカツ屋のようです。

「ちょ、ちょっと行かせてくれっ!」

 その男がようやく金目ひなたの父親の近くに来ました。

「あの~ 金目さん、かつ丼100人前持って来ましたよ!」

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