侵略者を撃つな! 61
金目陽一はバランスを崩します。そのまま線路に落下。そこに背後から電車が。この駅は小さな駅で快速電車は止まりませんが、今来た電車は快速電車だったのです。
「うわーっ!」
金目陽一は逃げるヒマがありません。ぐしゃっ! 血や肉片が広範囲に飛び散り、それが電車待ちで列に並んでた人々に降りかかりました。悲鳴をあげる人たち。
「きゃーっ!」
「うわっー!」
ホームは阿鼻叫喚。
「や、やべーっ!」
悪ガキたちは慌てて逃げようとします。が、ホームにいる一般客がそれを許しません。
「こいつらだーっ! こいつらがあの子を線路に突き落としたんだ!」
「オレたちじゃねーよ! あいつが勝手に落ちたんだよ!」
そんな言い訳は通じません。悪ガキたちはあっという間に取り押さえられてしまいました。
1台のパトカーが白昼の路上を走ってます。サイレンを鳴らしてます。緊急車両状態。
その車内。運転してるのは制服警官。助手席に金目ひなたの父親、後部座席には母親と金目ひなた本人がいます。3人とも口を閉じたまま。重苦しい雰囲気。なお、父親の頭には鉢巻きのような包帯が巻かれてました。
後ろから追いかけて来る車両はいません。緊急車両として稼働してるパトカーは赤信号を突っ切ることができますが、マスコミのクルマややじ馬のクルマはそれができないからです。
けど、上空にはマスコミのヘリコプターが1機いました。その機内から撮影されたパトカーの映像が、日本国中の茶の間に流れてました。
ここは警察署、その廊下。とても暗い廊下です。そこに設置されたベンチ型のイスに金目ひなたが座ってます。
ひなたはとても小さくなってます。こんな場所です。ほかに人はいません。
山際怜子の身体は電車に轢かれてバラバラになりました。金目ひなたの弟も電車に轢かれてバラバラになりました・・・ これはなんの因縁でしょうか?
金目ひなたは心の中で言いました。
「神様、全部私のせいです。報復はすべて私が受けます。家族に危害を加えないでください。お願いします。もうこんなの、嫌だよ・・・」
金目ひなたの横には大きな金属製の引き分けのドアがあります。中は遺体安置室。今両親が遺体確認を行ってます。金目ひなたも中に入りたかったのですが、遺体の損傷が激しく、小6には見せられないという理由で中には入れてもらえませんでした。
もしかしたら亡くなった人は赤の他人かも? かすかな希望ですが、今金目ひなたはそれにすがるしかありませんでした。
突然ドアが開きました。金目ひなたはそれに気づき、はっとして立ち上がりました。
「お父さん!」
ドアから出てきた父親は金目ひなたの顔を見ると、顔を横に振りました。否定の意思表示です。金目ひなたは唖然。そのままガクンと座っていたイスに再び座りました。両眼から涙があふれ出てます。
「うわーっ!」
金目ひなたはついに大声で泣いてしまいました。
再び白昼の路上。サイレンを鳴らしながら走るパトカー。中には金目ひなたと両親が乗ってます。席順は先ほどと同じ。ただ、先ほどはこのパトカー1台だけで走ってましたが、今はその前後を別のパトカーが挟む形で走ってます。計3台。
上空を見ると、やはりヘリコプターが飛んでます。マスコミのヘリコプターです。先ほどは1機でしたが、今回は複数飛んでます。
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