侵略者を撃つな! 58

 いいか、強い者が弱い者を助ける。民主主義の世界じゃ当たり前のことだろ! お前、オレの娘なのにそんなことも理解してなかったのか?・・・」

 オレ・・・ 父親がこの一人称を使うときは、気分がかなり高揚してるとき。めったにありません。父親はなげきます。

「ああ、なんてことだ。オレの娘がこんなモンスターになっちまったなんて・・・」

 その言葉は金目ひなたの心にグサリと刺さりました。私はモンスターじゃないよ・・・ けど、金目ひなたは反論することができませんでした。

 と、ここで突然のベルの音が。固定電話の呼び出し音です。父親はその電話を見て、舌打ち。

「ちっ!」

 そして母親に質問しました。

「さっきから電話が鳴ってるのか?」

「いえ、今日初めて・・・」

「マスコミじゃないのか?・・・」

 父親が電話に出ました。

「もしもし・・・」

 電話の向こうから、

「あ、こちら○○小学校です」

 それを聞いて父親は一安心。が、続く、

「金目陽一さんがまだ学校に来てないのですが・・・」

 の声に、

「え?・・・」

 父親の顔からさっと血の気が引きました。

 金目陽一とはこの男性の息子、金目ひなたの弟です。現在小学校4年生。金目ひなたは地元の小学校に通ってますが、金目陽一は私立の名門小学校に通ってました。

 母親は金目ひなたも私立の小学校に通わすつもりでした。が、父親の、

「市民感覚も大切だ」

 という理由で、あえて公立の小学校を選択しました。けど、息子の方は母親の意見が優先しました。

 その息子がまだ小学校に来ていない。これは一大事。父親は振り返り、ドアを開けました。母親はそれを見て、

「あなた、どこに行くの?」

「息子を捜しに行ってくる!」

 金目ひなた。

「待って、私も行く!」

 父親は振り返り、

「バカ言うな! お前は家の中にじっとしてろ! マスコミの餌食になりたいのか!?」

 ドアが閉まりました。金目ひなたはただ茫然とするだけでした。


 金目家車庫。家のドアが開き、金目ひなたの父親が出てきました。父親は手動式の門を開けました。するとそこに待ち受けていたテレビ局のクルーややじ馬たちが騒めきました。女性リポーターがマイク片手に叫びます。

「あ、たった今ガレージの門が開きました!」

 父親がそのリポーターに近づき、

「うちの息子が行方不明になってるんだ。頼む、通してくれ!」

 父親はそう言い終わるときびすを返しました。が、

「はぁ、それがなんだってゆーんだ?」

 父親は振り返ると、そこには2人の男が。1人はゴープロを父親に向けてます。さっき車庫に侵入してきて、警備員に押し返された数人の中の2人でした。半グレなのか、かなり人相の悪い眼をしてます。

 3人の警備員がその2人の前に立ち、

「君たち、ここは私有地だ。出て行きたまえ!」

 それに2人が反論します。

「はあ、何言ってんだ? 報道の自由だろ!」

「もしまたオレたちに手をだしたら、今度は暴行罪で訴えてやるからな! 覚えとけよ!」

「うっ・・・」

 3人の警備員はその言葉に反応してしまいました。そのやりとりを見てた父親は、半グレ風の2人の男の前に立ちました。

「どいてくれないか?」

 1人が父親の肩を鷲掴みました。

「おい、お前、何様だ!」

 父親はその男をにらんで、

「うちの息子が今行方不明になってるんだ。行かしてくれ!」

「はあ、何言ってんだ、お前?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る