侵略者を撃つな! 55
廊下を小走りに、いや、それ以上のスピードで突き進む先生。それに続く金目ひなた。先生と金目ひなたの眼の前に玄関が見えてきました。
玄関のガラス戸の向こうに1台のクルマが見えます。金目ひなたはそれを見てはっとしました。スウェーデン製のアッパーミドルクラスの自動車。実はこれは金目家のクルマなのです。
先生が玄関のドアを開けました。そして金目ひなたを見て、
「さあ、早く!」
なんでこんなところに我が家のクルマが? 金目ひなたは何が何だかわからないまま、玄関を出ました。するとクルマの運転席のドアの前に1人の男性が立ってました。金目ひなたの父親です。金目ひなたはびっくり。
「お、お父さん?・・・」
「乗れ!」
とぶっきら棒に言うと、父親は運転席に入りました。金目ひなたは慌てて助手席に乗りこみました。
アッパーミドルクラスのクルマが走り出しました。
道路を走る父親のクルマ、その車内。金目ひなたがハンドルを握る父親に質問。
「お、お父さん、なんで? 仕事は?」
それに父親はかなりこわばった顔で応えました。
「今はそれどころじゃないだろ!
おまえ、いったい何をやった?」
もしや山際怜子から毎日5,000円ずつ
「え? 何もやってないけど?・・・」
父親はそれを聞いて「ちっ!」と舌打ち。そして、
「これを見ろ!」
と強い調子で言うと、左手で金目ひなたにタブレットを差し出しました。金目ひなたはけげんな顔でそれを受け取り、ディスプレイを見ました。そこにはこんなものが映ってました。
地面に横たわってる女の子。山際怜子です。その周りにはたくさんの足が見えます。そう、これは金目ひなた一派の足です。山際怜子は素っ裸ですが、胸から膝上までモザイクボカシがかかってます。山際怜子は泣き叫んでます。
「何すんのよ、やめてって!」
「うるせーよ!」
という怒号とともに山際怜子の腹を思いっきり踏む足。悲鳴をあげる山際怜子。
「ぐふぁっ!」
山際怜子は踏まれた腹を両手で押さえ、丸くなります。ゴホッ、コボッと激しく咳き込んでます。横から、
「ふふ、いい
という声。
これを見てる金目ひなたは愕然として、ぽつりと言いました。
「こ、これ・・・」
そう、これは自身が広川雫に撮らせた映像です。なお、音声はすべて加工されてました。
父親はハンドルを握りながら横目で金目ひなたを見ました。
「その声、お前じゃないのか?」
金目ひなたは応えることができません。
映像がテレビのスタジオに切り替わりました。今までの映像は朝のワイドショーのものでした。MCの発言。
「これは今朝早く、動画投稿サイトにあげられた映像です。暴行を受けてる少女は山際怜子さんです。山際さんはこのあと電車に飛び込んで自殺しました・・・」
金目ひなたはタブレットを操作。チャンネルを変えました。
ディスプレイの映像はどこかの家の門の前、3人分の足下を映してます。大人の男性と大人の女性と女の子の足です。3人はインタビューを受けてます。3人の中の誰かがしゃべってます。音声は加工してますが、少女の声のようです。
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