侵略者を撃つな! 54

「お母さん、聞いて!」

 真田希望のぞみは事の次第を母親に話し始めました。お母さんはそれを聞いてるうちに唖然、そして激怒。特に担任の先生の、

「そういや、お前には小3と小1に弟がいたな。弟たちの未来を少しは考えてやったらどうだ?」

 のセリフには大きく反応しました。真田希望のぞみの口をふさぐために2人の弟、つまりお母さんの2人の息子を人質にしたのです。激怒して当然です。

 お母さんもこの映像の加工を手伝うことにしました。でも、お母さんはパソコンは苦手。あまり役に立ってないようです。

 そのうちお父さんが仕事から帰ってきました。お母さんはさっそくお父さんに事情を説明。当然お父さんも激怒。お父さんも映像の加工を手伝うことにしました。お母さんとは逆に、お父さんは役に立ったようです。

 こうして日付が変わるころ、問題の映像が動画投稿サイトにアップロードされました。


 次の朝がやってきました。路上では児童生徒たちが続々と登校して行きます。その中には金目ひなたの姿もありました。

 金目ひなたが交通整理している初老のおじいさんにあいさつ。

「おはようございます!」

 おじいさんが笑顔で応えます。

「おはよう、ひなたちゃん」

 金目ひなたはとても明るく、登校中いろんな人に笑顔であいさつをします。あいさつされた人の大半はあいさつを返してました。

 ちなみに、金目ひなたは小学生ですが、ランドセルではなく大きなショルダーバッグを肩からかけてます。美しくて艶のある長髪を守るため、ショルダーバッグを選んでるようです。

 金目ひなたの前に小学校が見えてきました。昨日下校のとき、何人かのマスコミの姿がありましたが、今日はいません。金目ひなたが校門を通過しました。


 ここは金目ひなたたちのクラス。開けっ放しのドアから金目ひなたが入ってきました。

「おはよう!」

 教室の中にいた飯島莉桜りおがそれに反応、すぐにあいさつを返しました。

「おはよう、ひなた」

 2人はおしゃべりを開始。それは昨晩視聴したテレビのこと。山際怜子のことはいっさい出てきません。

 そのうち片岡愛美が教室に帰ってきました。

「おはよう!」

 金目ひなたと飯島莉桜りおは返事をします。

「おはよ、飯島まなちゃん」

 飯島愛美はあたりを見回します。

「あれ、広川ひろちゃんは?」

 そう、いつもは4人の中で最初に教室に到着する広川雫の姿がないのです。

「う~ん、風邪かなあ・・・」

 飯島莉桜りおはそう応えました。でも、金目ひなたはなんとなく嫌なものを感じました。何か起きるような・・・


 朝のホームルームの時間となりました。が、先生がなかなか来ません。昨日と一緒。教室が騒めきます。数人の男子児童の会話。

「おいおい、今日も先生、来ないじゃん」

「まさか、また誰か自殺した?」

 男子児童の1人がクラスを見渡します。

「う~ん、広川と真田が来てないみたいだけど・・・」

「真田って一昨日自殺した山際といつも一緒にいたヤツだろ。まさか、後追い自殺?・・・」

 と、突然引き戸が開き、先生が顔を出しました。そして、

「金目さん」

 と言いながら、右手でおいでのポーズ。金目ひなたはびっくり。

「え、私?」

 金目ひなたは立ち上がり、先生のもとへ。先生はその金目ひなたに、

「今すぐ玄関に行って!」

「え、なんで?」

「ともかく、今すぐ行って欲しいんだ!」

 金目ひなたは言われるまま、廊下に出ました。

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