侵略者を撃つな! 41

 一方金目ひなたはランドセルに教科書を収納してます。山際怜子の行動にはぜんぜん興味がないようです。結局この日、金目ひなたたち4人は、山際怜子に手を出すことはありませんでした。

 翌日も金目ひなたたち4人は山際怜子に手を出すことはなく、一方山際怜子は授業が終わると即行で帰宅しました。その翌日も、そのさらに翌日も。こうして何もないまま、次の日曜日が来ました。


 金目ひなたの父親はキャリア官僚。日曜日も仕事や接待ゴルフで家にあまりいないのですが、この日はいました。金目ひなたは父親が大好き。金目ひなたは父親とおしゃべりがしたくなり、リビング兼書斎に行きました。

「お父さん!」

 父親はソファに座り、紙片を見ながら頭を抱えてました。どうやら給与明細書を見てるようです。と、愛娘に気づきいたようです。

「あ、ひなたか」

「どうしたの、お父さん、頭抱えて?」

「いや~ 税金がまた上がったんだよ」

「ええ、どれくらい?」

「う~ん、社会保険料を入れると5割くらい・・・」

「ええ、そんなに?」

 小学校6年生の金目ひなたから見たら、所得税も住民税も社会保険料も一緒。お父さんはお国のために毎日夜遅くまで働いて、日曜日も仕事してるのに、半分も税金に取られてる。なのにあの山際怜子の兄は、障害者という理由で働いてもいないのに国からお金をもらってる。きっとそのお金の中には、お父さんが一生懸命働いたお金も混じってるはず。こんなのあり?・・・

 金目ひなたの心に一度は鎮火したはずのよからぬ感情がまた燃え上がってきました。


「きゃーっ!」

 山際怜子が突き飛ばされました。あのときの公園、あのときの植え込みの陰です。山際怜子の眼の前に金目ひなたたち4人が立ちふさがってました。金目ひなたが1歩前に出て、ドスの効いた声を響かせます。

「5,000円持ってきた?」

 山際怜子は1週間前金目ひなたたちにカツアゲされて以降、ずーっと財布に5,000円を入れてました。けど、あれ以来山際怜子は強請ゆすられることはありませんでした。だからいつしか安心して登校してました。まさかここでまた強請ゆすってきたなんて・・・

 これ以上暴力を受けてはたまりません。山際怜子は尻もちをついたまま、財布を出しました。

「なんだ、今日はききわけがいいじゃん」

 と言うと、片岡愛美はその財布をはぎ取るように奪いました。そして財布の中身を見ました。

「へ~ 言いつけ通り5,000円入ってるじゃん」

 前回は財布を強い調子で投げ返した片岡愛美でしたが、今日は優しく投げ返しました。

「ほらよ」

 その財布を両手でキャッチする山際怜子。その山際怜子に金目ひなたは冷酷に発言しました。

「明日も5,000円持ってきな」

 山際怜子は愕然。

「え・・・」

 片岡愛美。

「なんだよ、その顔は?」

「そんなにお金、ありませんよ・・・」

 金目ひなた。

「はあ? 何言ってんだ? おまえんとこの家、国からたくさんお金もらってるんだろ。それをほんの少し分けてくれよって言ってんだよ。それとも何か? おまえんとこのアニキは障害持ちだとクラス中にバラされてもいいのか?」

 あせる山際怜子。

「そ、それは・・・」

 金目ひなた。

「嫌なら明日も明後日あさってもその次の日も5,000円持って来な!」

 山際怜子は涙目。広川雫そんな山際怜子を見て、かわいそうになってきました。

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