侵略者を撃つな! 39

 自分の父親は税金をたくさん払ってる。なのに、あの車いすの男は障害者というだけで国からお金をもらってる。その中には父親が払ってる税金も入ってるはず・・・ こんなのあり?

 車いすを押してる山際怜子はかなり明るい顔。受け応えしてる男性も明るい顔。それを見てた金目ひなたの脳裏にいびつな感情が湧いてきました。


 翌日ここは小学校。下校時刻らしく、たくさんの児童が出てきました。その中の2人の少女。1人は山際怜子。もう1人は彼女の大の親友真田希望のぞみ。真田希望のぞみは山際怜子を見て、

「じゃね」

 山際怜子も応えます。

「うん」

 2人は別々の方向に歩き始めました。山際怜子が住宅街の路地を歩いてると、突然眼の前に複数の人影が立ちふさがりました。はっとして立ち止まる山際怜子。立ちふさがったのは金目ひなたたち4人。金目ひなたはぶっきら棒に、

「ねぇ、ちょっと来て」

 山際怜子は嫌なものを感じました。


「きゃっ!」

 山際怜子が突き飛ばされ、お尻から地面に落ちました。ここは公園。植え込みの陰。山際怜子が見上げる金目ひなたたち4人。金目ひなたが上から目線で発言します。

「あんた、障害持ちのアニキがいるんだって?」

 山際怜子はそれを聞いてびっくりしましたが、そのまま口をふさいで視線をずらしました。

 金目ひなた。

「障害者手帳を持ってる人は国から年金もらえるんだって? その金、どっから出てるんだよ? 一般市民の税金から出てるんじゃないのか!?」

 片岡愛美。

「なあ、そのお金、少しうちらにもわけてくれないか?」

 山際怜子は愕然として、

「ええ、そんなお金ないよ・・・」

 金目ひなたは語気を荒げ、

「ふざけんよ、この税金泥棒が!」

 片岡愛美。

「どうせタダ同然でもらってる金だろ」

 金目ひなた。

「今いくら持ってるんだ? 財布出しなよ」

 けど、山際怜子は反応しません。金目ひなたは怒鳴ります。

「財布出せと言ってんだよ! おい!」

 片岡愛美。

「財布出さないと、お前のアニキのこと、クラス中に言いふらすよ!」

 山際怜子はあの兄の存在を秘密にしておきたかったようです。しぶしぶ財布を出しました。片岡愛美はそれを奪うように取ります。そして財布の中身を確認。財布からお金を全部抜き取ります。

「2,700円ちょっとか・・・

 返すよ、ほらっ!」

 そう言うと、片岡愛美はスリークォーターで財布を投げました。財布は山際怜子の顔面に命中。

「いたっ・・・」

 金目ひなた。

「次は5,000円入れてきな!」

 片岡愛美は横目でこの公園の斜面にあるコンクリート製の階段を見て、

「もし入れて来なかったら、おまえのアニキを公園の階段から突き落とすからな!」

 その一言は山際怜子の心にぐさりと刺さりました。4人組の中の広川雫も、この言葉には唖然としたようです。

 山際怜子は立ち上がると、逃げるように駆け出しました。4人はそれを見送りました。片岡愛美はほくそ笑んでます。

「へへ」

 一方金目ひなたの顔色は真逆。ちょっとやり過ぎたかな、て顔をしてます。


 それから十数分後、ここはハンバーガーショップ。金目ひなたたち4人がテーブルに座ってハンバーガーやポテトフライを食べてます。片岡愛美はかなりハイになってます。

「きゃははは、愉快愉快! こんな簡単に財布が見つかるなんて!」

 一方広川雫は神妙な顔つきになってます。片岡愛美はそれに気づき、

「なんだよ、広川(ひろ)ちゃん、そのしけた顔は? せっかくいい財布が見つかっというのに・・・」

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