侵略者を撃つな! 37
ちなみに、倉見隊員が即退室した理由ですが、半分は隊長が言ったことが正解。半分は日向隊員の思い込みが正解でした。
倉見隊員は日向愛こと金目ひなたがテレストリアルガードに来ることを知ってました。その金目ひなたの陰湿なイジメのせいで、1人の少女が自殺したことも知ってました。
そんな悪党の首から下は、亡き海老名隊員の肉体。倉見隊員も海老名隊員は良き仲間だったと思ってます。特に倉見隊員は、海老名隊員に特別な思い入れがありました。海老名隊員は死の縁から自分をすくい上げ、さらに視力も回復させてくれた命の恩人なのです。それゆえ彼の思いも複雑でした。それで足早に部屋を出て行ったのです。
隊長と女神隊員のアニメの視聴が続きます。日向隊員も見てますが、さっきの倉見隊員の行為に少し心を痛めてしまったようです。
と、ここでまた自動ドアが開きました。今度はギターケースを抱えた私服姿の寒川隊員が現れました。日向隊員はそれにいち早く気づき、さっと立ち上がって深く会釈しました。
「お、お帰りなさい!」
隊長も立ち上がり、日向隊員を見ながら倉見隊員に話しかけました。
「寒川、お帰り。この
「よ、よろしくお願いします!」
日向隊員はぎこちなく会釈すると、再び左手で右手のグローブを脱ぎ、右手を差し出しました。今回も握手を求めたようです。なのに寒川隊員はそれを無視して振り返り、部屋を出て行ってしまいました。寒川隊員はこのサブオペレーションルームの中で一言も口をきかなかったのです。
え、なんで?・・・ 日向隊員の眼に急激に涙があふれ、そのまま頬を流れ落ちました。隊長はそれに気づき、
「お、おい、こんなことで泣くなよ!」
日向隊員は応えません。いや、応えることができません。隊長は言葉を続けます。
「あいつが出て行った原因はオレだ。お前には何1つ関係ないんだ。気にすんな!」
正にその通り。寒川隊員は1ケ月後すみれ隊員と初コンサートを予定してます。その宣伝のために毎日毎日街角に立ってストリートライヴをする気でいました。なのにすみれ隊員はメガヒューマノイド改造手術に取られてしまったのです。
隊長にその責任はいっさいないのですが、それ以来隊長と寒川隊員の関係はぎくしゃくしてました。寒川隊員は書面で一度は隊長に謝罪しましたが、どうも隊長と一緒にいたくないようです。サブオペレーションルームに入ってきたのは、帰基地を伝えるためでした。
なお、寒川隊員は日向隊員の正体に気づいてないようです。けど、日向隊員は自分のせいで寒川隊員が出て行ってしまったと思い込んでしまいました。
「困ったな・・・
どうだ。自分がやった悪事を全部ここで話してみないか? ま、実のところ何があったのかだいたい知ってるが、胸の奥に閉じ込めておいた嫌なことを全部吐き出しちまうと、かなり楽になるぞ」
日向隊員はぽつりと応えました。
「はい・・・」
上溝隊員は一瞬嫌な顔をすると、おもむろに立ち上がり、自動ドアの方に歩き始めました。隊長はそれに気づき、
「上溝、どこに行く?」
「ト、トイレです」
「おまえ、30分前にトイレに行ったばかりだろ」
そうです。上溝隊員は30分前にトイレに行ったばかりなのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます