侵略者を撃つな! 25

 ユランはぽつりと寒川隊員に話しかけてます。

「オレの星の尺度で12年前、オレの母星惑星リントブルムはユミル星人に侵略された。リントブルムはあっという間に占領されてしまったんだ。

 それからはひどいものだった。税金はとてつもなく上がり、少しでも不満を言えば公開処刑。しかも処刑は本人だけではなく、2等身まで処刑になった。親族がいなきゃ、向こう3件まで連座制公開処刑だ。だから誰も文句を言えなかった。

 ある日地球侵攻のお触れが出て、自分たちは兵隊に取られた。集められたリントブルム星人は、まず脳に圧力をかけられ、無理やり地球の言語をインプットされた。これによって約3割のリントブルム星人が廃人になったな。

 次に肌。自分たちの肌は紫色だったが、無理やり脱色させられた。こいつはとてつもなく痛かったなあ・・・ あまりの痛さに、自分も何日も何日も泣いたよ。

 そして軍事訓練。短期間で覚えさせるために、毎日毎日半日以上訓練させられたな。少しでもヘマすりゃ、銃床でブン殴られた。半分は脱走したが、全員射殺されたようだ。

 いよいよ作戦の日が来た。自分たちはコイダ星人とともに降下強襲用宇宙船に押し込められ、地球へ飛ばされた。その前には水素核融合弾が飛んでいた。まず地球に水素核融合弾を撃ちこみ、つぎに自分たちがその爆心地周辺に降りて、橋頭保を築く。そのあと本隊がやってきて、地球を占領する。

 これは自分たちの母星が侵略されたときに使われた手だ。自分たちがやられた屈辱を今自分たちがやろうとしている。これはたまらなかったな。

 そのうち地球から迎撃ミサイルが飛んできた。自分たちが乗ってた船は惑星に降下することだけに特化した船で、迎撃ミサイルを迎撃する光学兵器やミサイルはないに等しかった。船は次々と迎撃されていったな。

 自分は死を覚悟したが、なんとか無事に地球に降下することができた。地球に降りた自分は無我夢中で銃を乱射した。死にたくなかった。今思えば、何人地球人を殺したことか・・・」

 ユランは寒川隊員の顔を見て、

「君とあのバイオレットというには、ほんとすまないことをした」

「いや、自分の家族は最初の水素核融合弾で全員死んでます。あなたのせいじゃないですよ」

「ふ、そう言ってもらえるとうれしいよ。

 戦争はずーっと続くと思ってたが、ヴィーヴルが介入したと聞いて、降下強襲用宇宙船はさっさと撤収して行った。気づいたら自分は地球に取り残されていたんだ。

 自分は慌てて近くにあった地球人の死体から衣服をはぎ取り、それを着た。そのまま地球人として生きてくことにしたんだ。母星はユミル星人に占領されてる。それを考えると、地球はパラダイスだったよ。

 けど、半年前、自分の眼の前に別のリントブルム星人が現れ、こう教えてくれたんだ。

 実は別の惑星を侵略するために集められたリントブルム星人が反乱を起こし、丸ごと宇宙傭兵部隊ヴィーヴルに入隊した。そこでリントブルム星人たちは目覚ましい活躍を見せ、それを認めてくれたヴィーヴルは、惑星リントブルム独立に手を貸してくれることになった。

 自分もその独立戦争に参加するつもりだ! 今はリントブルムからの迎えを待ってるところなんだ」

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