侵略者を撃つな! 20

 ここはハンバーガーショップ。カウンターに何人か並んでます。今大柄な男の番となりました。男は1人です。さっそく注文開始。

「お待ちしました!」

 店員がトレーに商品を並べると、そのトレーを持ち、男に手渡しました。店員は笑顔であいさつ。

「ありがとうございます!」

 男は左に90度ターン。

 この映像を見ている寒川隊員はその横顔を見て、

「これは?」

 隊長が応えました。

「ユラン岡崎だ。変装していないバージョンと言った方がいいかな?」


 映像の中、ユランがテーブルのイスに座りました。これを撮影してる人は、その隣の席に座ったようです。

 と、ユランの向こう側の席に2人が座りました。ヨーロッパ人と思われる老夫婦です。

 夫の方がユランを見てしゃべりました。それを聞いてユランは横目でその老夫婦を見ますが、すぐに自分が購入したハンバーガーの方に興味が移りました。で、ハンバーガーをパクリ。一方老夫婦のおしゃべりは続いてます。老夫婦の言語は日本語ではありません。ゆえにユランは興味がないようです。

 この映像を見てた寒川隊員が隊長の顔を見て、

「この映像がなんなんですか?」

 意味もない映像を見せられ、寒川隊員は不信感を抱いたようです。隊長はリモコンを押しました。

「じゃ、今度は日本語の字幕をつけてやろうか」

 映像がちょっと巻き戻りました。ユランの横にヨーロッパ系の老夫婦が座ったところで再開。

 夫の方がユランを見てしゃべりました。それに合わせ、字幕テロップが現れました。

「ん、この男の人はヨーロッパ人か?」

 今度は妻の発言。

「我々と同じ国の人かしら?」

「いや~ 我々の国は小さいし、人口も少ないから、その可能性は少ないんじゃないか?」

 が、ユランはその会話にまったく興味がないようです。ただひたすらハンバーガーにぱくついてました。


 サブオペレーションルーム。隊長は寒川隊員を見て、

「この2人はリントブルム大使館で働いてた夫婦だ。もちろんリントブルム人だ。しゃべってる言語は当然リントブルム語だ」

「え・・・」

 寒川隊員は唖然としてしまいました。隊長の発言。

「これは3年前、公安7課がわざわざ元リントブルム大使館の職員を雇って作った映像だ。ユラン岡崎が本当にリントブルム人なのかどうか試したってわけだ。

 リントブルム人なら当然リントブルム語を知らないといけないな。けど、ユラン岡崎はリントブルム語にはまったく反応しなかった。少なくとも地球上のリントブルム人じゃないな」

 寒川隊員は頭の中でいろいろと考えました。ユランさんは父親は日本人と言ってた。きっとずーっと日本で暮らしてた。それでリントブルム語を知らなかったんだ。で、でも、リントブルムは我が故郷と言ってたような・・・

 隊長の発言が続きます。

「知ってると思うが、6年前地球に降りてきたユミル星人の兵隊は、ユミル星人本体ではなく、ユミル星人に占領され、植民地となってた惑星の人々だ。特に多かったのがコイダ星人だ。

 コイダ星人は地球人と瓜二つ。しかも白人・黒人・東洋人にそっくりな人種もいた。もし緊急事態が発生し地球に取り残されてしまったら、そのまま地球人に化けて過ごさせるつもりだったんだろう。ま、実際その緊急事態が発生したわけだが。

 ただ、コイダ星人は声帯が未発達で、まともに口がきけなかった。そのうえ、文化レベルが今の地球の1万年以上前。これじゃ手先として使えないな。そこで高レベルの文化を有してる上に、口のきける人種をコマンダーとして入れておく必要があった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る