侵略者を撃つな! 21
「実はユミル星の植民地となってた星に惑星リントブルムがあってな」
寒川隊員はその隊長のセリフを聞いて愕然としました。
「え・・・」
「オレが言いたいことがわかるか?」
寒川隊員は小さな声で応えました。
「ええ、わかります。自分もテレストリアルガードの人間ですから・・・」
さすがの寒川隊員でもここまで細かく説明されれば、ユラン岡崎の正体を認めざるを得ません。ユラン岡崎の出身地は、地球上のリントブルム国ではなく、惑星リントブルム・・・
隊長は1枚の写真を取り出し、それを寒川隊員に見せました。
「これがリントブルム星人だ」
その写真には紫の肌の男が写ってました。ただ、肌の色以外は地球人の顔にそっくりです。
「見ての通り肌の色はかなりどぎついが、きれいに脱色したら地球の白人になるような気がしないか?
本当のことを言うと、あとに見せた影像は、君とすみれが初めてライヴハウスのステージに立った日、つまり君が初めてユラン岡崎と会った日の翌日に公安7課から呼出しを受け、見せてもらっていた。そのときこのユラン岡崎は、惑星リンドブルムからやってきた宇宙人だと説明されていた。
けど、オレはいまいち信用できなかった。後半の映像のユラン岡崎とオレが知ってるユラン岡崎とは、あまりにも違う風貌だったからな。そこで公安7課は前半の映像を撮ってきてオレに見せた。これを見せられたら、もう納得するしかないだろ」
寒川隊員は少し考え、そして発言しました。
「オレにどうしろっていうんですか?」
「別に。オレたちは宇宙人から地球を守るテレストリアルガードだ。テレストリアルガードの隊員が宇宙人に騙されてちゃいかんだろ。
今まで説明してこなかったが、この際だ、本当のことを教えてやろう。
6年前地球に侵入してきたユミル星人の軍隊は、ヴィーヴルが介入したと聞いて一目散に逃げだした。そのためにたくさんのユミル星人の兵隊が地球に取り残されてしまった。
初めのうちはそれらの兵隊を発見次第拘束していったが、あまりにもたくさんいてきりがなかった。それにそれらの宇宙人は地球にうまく溶け込んでいて、真面目に働いてるものばかりだった。拘束したら経済活動に支障が出るケースも出てきた。どうやらユミル星人は、真面目な人種をばかりを捉えて兵隊にしてたようだな。
そこで当時結成したばかりのテレストリアルガードは、拘束をやめ、彼らの生活を静かに見守ることにした。もちろん犯罪を犯したりスパイ活動を行ってるものは即刻拘束するつもりでいたが、そんなことするものは皆無だった。ただ、事情を知らない一般市民から宇宙人発見の通報があった場合は、仕方なく拘束していた」
「じゃ、ユランさんは?」
「彼は拘束の対象ではないよ。大目に見ている」
寒川隊員は安心した顔を見せました。かなり安心した顔です。隊長の発言はさらに続きます。
「ただ、いつ気が変わるのかわからんからな。それに密かにスパイ活動してる可能性もある。そこで公安7課が監視してるわけだ。その公安7課から連絡があれば、オレたちはすぐに残党狩りを仕掛けることになっている。
おっと、今のオレの発言は他の隊員には内緒だぞ。特に橋本。あいつに伝えるといろいろと面倒なことになるから、絶対言うなよな。
で、お前、どうするつもりだ?」
「さあ・・・ 今の話は聞かなかったことにしますか・・・」
隊長はふっと笑いました。
「ふ、そっか。わかった」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます