侵略者を撃つな! 16
真昼の街中の広場。寒川隊員がアコースティックギターを鳴らし、すみれ隊員が歌ってます。それをたくさんのオーディエンスが幾重にも囲って聴いてます。それだけではありません。近くのデパートの外周のテラスも、たくさんのオーディエンスが群がってます。
観衆の一番外側には私服姿の隊長がいます。さらにその外側には、警官の姿が要所要所にあります。寒川隊員はギターを弾きながらそれを見て、
「あは、隊長、今日もストリートライヴの許可申請をしたな。しかし、警官に守られてやる路上ライヴなんて聞いたことないぞ」
隊長はたくさんのオーディエンスを見回して、
「ふふ、短期間でこんなにも人を集めてしまうなんて・・・ そろそろ大きなコンサートホールを用意した方がいいんじゃないか?」
内心笑ってる隊長ですが、実はかなり気になる情報を取得してました。それは寒川隊員にも伝えないといけない情報です。けど、いまいち信用できない情報でもありました。なのであえて無視を決め込んでました。
ポロロ~ン、寒川隊員は最後の音を弾き終えました。と同時に、ものすごい大声援が起きました。
「うぉーっ!」
それに応える寒川隊員。
「ありがとう、みんな!」
けど、やはりすみれ隊員はまったくの無表情、無反応です。
寒川隊員のMC。
「オレたちバイオレット&ユタカは、今度セブンスカーペットというライヴハウスでライヴをやります! ユラン岡崎という先輩歌手と合同ですが、初めてのメインアクトです!
それが成功したら、今度は大きなコンサートホールでやろうと思います。それには力が必要です! みなさん、オレたちを応援してください!」
それに観客たちが応えます。
「いいぞ、やれやれ!」
「応援してるぞ!」
寒川隊員のMCが続きます。
「ありがと! じゃ、次の曲、行きます!」
ジャーン! 寒川隊員はギターを大きくかき鳴らしました。
それからもバイオレット&ユタカのストリートライヴは毎日のように続き、そしていよいよ16日が来ました。
ここはライヴハウスセブンスカーペット楽屋。ギターケースを持ったユラン岡崎がドアを開け、楽屋に入ってきました。中では寒川隊員とすみれ隊員が待ってました。ステージ衣装のつもりか、いつもよりちょっと豪華な私服です。
寒川隊員が立ってあいさつ。
「ああ、ユランさん。どうも!」
「ん、なんだ。もういたのか? 早いなあ!」
「ええ、ずーっと待ってましたよ」
「ん? うーんと早くこの部屋に来て待っていた、てことかな?」
「いえいえ。今日という日をう~んと首を長く伸ばして待ってた、てことですよ」
「あは、そっか。ふ、じゃ、期待に応えないといけないな」
ユランはすみれ隊員を見て、
「君がヴォーカルのバイオレット?」
けど、すみれ隊員は顔色を変えません。寒川隊員はそれを見て、
「すみません。彼女は脳に障害があって、感情が希薄なんです」
「ん、脳に障害?」
「6年前の戦争で頭に大けがを負ってしまって・・・」
それを聞いてユランの身体に衝撃が走りました。
「ええ・・・」
それを見て寒川隊員の脳裏にある疑問が浮かびました。
「あれ、ユランさん、また過剰に反応した、戦争の話に?・・・ 母国が戦争に巻き込まれてるから、戦争の話になると過剰に反応しちゃうのかな?・・・」
寒川隊員は今度は声を発しました。
「ユランさん、まだ時間がありますから、ちょっとリハしません?」
ユランは我に還りました。
「あ? ああ・・・」
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