侵略者を撃つな! 10

 寒川隊員は頭に?を浮かべました。が、すぐに話題を変えました。

「あ、そうだ! 隊長、初めてのライヴ、決まりましたよ!」

 隊長の顔色がぱっと変わりました。

「ほう!」

「A市にあるセブンスカーペットというライヴハウスを押さえました。ま、押さえると言っても、オープニングアクト、つまり前座なんですが」

「あは、やっぱ最初はそんなものか・・・」

 隊長はオープニングアクトて単語に不満を示しました。でも、すみれ隊員はまだ路上ライヴしか経験がありません。ステージの実績がないのです。これは許容しないといけませんね。

 でも、ライヴハウスはたくさんあります。その気になればすぐにでもステージに上がれるはず。けど、ライヴハウスにはそれぞれ特色があります。どのライヴハウスでもいいというわけではありません。

 寒川隊員はいろいろとライヴハウスを検索してました。尾崎豊で検索してると、あるアーティストに眼が止まりました。ユラン岡崎。尾崎豊をリスペクトしていて、彼の曲だけをカバーしてるアーティストです。かなり人気があるようです。寒川隊員も尾崎豊をカバーしていて、すみれ隊員には尾崎豊の曲だけしか歌わしてません。これはかなり気になります。

 ユラン岡崎は月に1回セブンスカーペットというライヴハウスでライヴをやってました。いつもは1組前座が付くのですが、次回のライヴは今のところ前座の予定はなく、ワンマンになるとか。そこで寒川隊員が申し込んだのです。

 話を現在に戻しましょう。寒川隊員は隊長を見て、

「宣伝を兼ねて前の日にA市の駅前でストリートライヴをやるつもりです」

「ふ、わかった。オレも時間を開けておくよ」


 昼間の駅前の広場。典型的な郊外の駅という感じ。あまり大きな駅ではありません。付近にスーパーマーケットはありますが、デパートはありません。小さなバスターミナルが見えます。

 少し広くなったところで寒川隊員がアコースティックギターを鳴らし、すみれ隊員が歌ってます。もちろん2人とも私服です。それをたくさんのオーディエンスが取り囲んで聴いてます。

 寒川隊員はギターを弾きながら思いました。

「ふふふ、今日もすごいオーディエンスだ。すみれは本当にすごい! どこに行っても超満員だよ! 初めてのステージもきっと成功するぞ!」

 ジャーン! 寒川隊員が最後の音を鳴らしました。ワンテンポ置いて観衆からものすごい歓声と拍手が。寒川隊員は満足顔。けど、すみれ隊員は相変わらず顔色を変えません。

 寒川隊員のMC。

「みんな、ありがとう!」

 するとオーディエンスから大きな反応が。

「いいぞ!」

「もっと聴かせてよ!」

 中にはこんな声が。

「コンビ名はなんてゆーんだ?」

 それは寒川隊員の聞き覚えのある声。寒川隊員がその声の方向を見ると、そこには私服姿の隊長がいました。寒川隊員は思わず苦笑い。

「隊長・・・」

 寒川隊員は本名でステージに上がるつもりでしたが、隊長の命令・・・ いや要望です。急遽名前を考えました。

「バイオレット&ユタカ!」

 バイオレットとはすみれ隊員のこと。すみれの英名です。ユタカとは尾崎豊をリスペクトしてる寒川隊員のこと。

 隊長はにこやかに応えます。

「ほー、いい名前じゃないか!」

 寒川隊員はまともや苦笑い。その状態で発言。

「じゃ、次の曲行きます!」

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