侵略者を撃つな! 3

 隊長はスマホの電話を切ると、それをジャケットのポケットに入れました。その隊長に寒川隊員が話しかけました

「すみません。こんな非常時にストリートライヴなんかやってしまって・・・」

「ふふ、何を言う。これは突発的事故だ。ストリートライヴとはな~んの無関係もないだろ。むしろオレはあんたに感謝したい気分だよ」

 寒川隊員はちょっとびっくり。

「え?」

 隊長は横目で後部座席のすみれ隊員を見て、

「なんとしてもこいつを元の黒部すみれに戻してくれ。それが今のおまえへの命令だ」

 寒川隊員は笑って、

「えへ、わかってますよ」

 路上の4ドアセダンが走り出しました。


 夜の上空。クレイン号の機影が見えます。下は山間部のようですが、真っ暗で何も見えません。

 クレイン号コックピット。操縦席には橋本隊員と倉見隊員が座ってます。50人ほど座ることができる一般座席はほぼ満席。全員同じユニホーム。同じ装備品。実は彼らは警察のレンジャー部隊。飛行機墜落現場に向かってる途中です。

 クレイン号の行く先に炎が見えてきました。あまり大きな災ではありませんが、明らかに不自然な災です。橋本隊員はそれを見て、

「む、あの火は?・・・ どうやらあそこが墜落現場のようだな」

 橋本隊員は倉見隊員を横目で見て、命令。

「ライトオン!」

「了解!」

 クレイン号の下部の投光器が強烈な光を放ちました。光で照らし出された山肌。飛行機と思われる部品が散乱してます。

 コックピットの橋本隊員。

「あ~あ、こりゃまた、ずいぶん激しく散乱してるな・・・」

 橋本隊員は再び倉見隊員を横目で見て、

「おい!」

「はい!」

 倉見隊員は5点式シートベルトを解き、レンジャー部隊の前に立ちました。

「みなさん、墜落現場に到着しました。みなさんにはこれから地上に降りてもらいますが、念のためにもう1度説明します。

 これから使用する光の昇降機は一度に300kgが限界です。その範囲内で昇降してください」

 レンジャー部隊の隊員が一斉に応えます。

「了解!」


 クレイン号が反重力エンジンを使ってゆっくり降下。そして地上50mくらいで静止。クレイン号の腹のハッチが1つ開き、そこから淡い光が地上へ放たれました。その光を使ってレンジャー部隊の隊員が降下していきます。基本3人ずつ、大きな装備や機械をもってるグループは2人か1人。ちなみに、ストーク号はこの昇降機が2つついてますが、クレイン号は1つだけです。

 降下が完全に完了すると次のグループが降り始めます。その中の1人の隊員が眼を丸くしてつぶやきました。

「ど、どういう原理なんだ、こりゃ?・・・」

 隊員たちは地上に降りると、それぞれ探索や救助を開始。それを橋本隊員と倉見隊員がコックピットのモニターで見てます。橋本隊員がつぶやきました。

「こいつは生存者はいないんじゃないのか?・・・」

 と、ここで無線機のスピーカーが鳴りました。

「生存者発見! 生存者発見! これからクレイン号にリフトアップします!」

 それを聞いて橋本隊員と倉見隊員が驚きました。

「ええ? 生存者、いたの?」

 淡い光に2人の隊員が入りました。2人は協力して1つの担架を持ってます。担架には誰かが乗ってるようです。2人の隊員と担架が浮上し始めました。

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