侵略者を撃つな! 4

 クレイン号機内、窓のないキャビン。部屋の中央にはベッドがあり、12歳くらいの少女が寝かされてます。少女は首から上はまったくの無傷ですが、首から下はかなりひどく損傷してます。胸は血だらけ。折れてるのか、肋骨も見えます。腹から下もひどいケガです。腸が飛び出してます。なお、少女の髪ですが、張りのあるロング。腰のあたりまでありそうです。

 この少女を橋本隊員と倉見隊員と彼女をリフトアップした2人のレンジャー隊員が見てます。橋本隊員の発言。

「こいつはひどいなあ。本当に生きてんのか?」

 レンジャー隊員の1人が応えます。

「心音があります。まだ生きてます!」

「うーん・・・」

 橋本隊員は倉見隊員を見ました。

「よし、とりあえず生命維持カプセルに入れよう」

「わかりました」

 その後もレンジャー部隊は生存者を探索しましたが、他の生存者は発見できませんでした。

 あたりが明るくなってきました。山の端から太陽が顔をのぞかせました。たくさんのヘリコプターが飛んでます。自衛隊、警察、消防、そしてマスコミ。

 一方クレイン号の機影はありません。すでにこの場を去ったようです。


 数時間後、ここはテレストリアルガード基地地下廊下。倉見隊員がバケツと雑巾を持って歩いてます。向こうから上溝隊員が歩いてきました。2人ともテレストリアルガードの隊員服を着てます。上溝隊員が倉見隊員に気づきました。

「あれ、倉見さん、どうしたの?」

「あは、クレイン号の掃除ですよ。飛行機事故で唯一生存してた女の子を収容したら、彼女の血がいろんなところにくっ付いちゃって・・・ 地下工場で拭きとってくれると思ってたら、これくらいおまえらで拭けって言われちゃって・・・ しかたなくこれから掃除ですよ」

 上溝隊員が応えます。

「あは、それは大変ねぇ・・・ ところで、あの話聞いた?」

「自分たちが救出した女の子の話ですか? なんか首をちょん切ってえびちゃんの身体に付け替えるて話を聞いたけど、そんなこと、ほんとうにできるんですかねぇ?・・・」

「う~ん、えびちゃんは脳は死んじゃったけどそれ以外は全部生きてるから、できるんじゃないかなあ? それより、女の子の話は聞いてないの?」

「いや~ ぜんぜん。何かあるんですか?」

「あ~・・・」

 上溝隊員は残念て顔を見せ、発言を続けました。

「3日前、小6の女の子がいじめで自殺した事件があったわよねぇ。ほら、電車に飛び込んでバラバラになったやつ」

「あ~ ありましたねぇ、そんな事件。犯人の名前は、たしか金目ひなた」

「そうそう、それ。実は今回あなたが助けた女の子は、その金目ひなただったのよ」

「ええ?」

 倉見隊員は一瞬絶句。そして会話を再開。

「う~ん、なんだろ? なんか急に嫌な気分になってきたなあ・・・」

「私たちとずーっと一緒だったえびちゃんの身体にあいつの頭をつなぐのよ。これってあり?」

「乗員乗客123人のうち122人が死んで、唯一生き残ったやつがそんな悪党だったなんて、神様は何やってんだろう? 世の中間違ってるよ・・・」

 城所弁護士自動車暴走事件・テレストリアルガード本部ビル乱射事件・大島さんの自殺。これらの事件の背後には幽霊と化した海老名隊員がいます。隊長と女神隊員はそれを知ってますが、橋本隊員・倉見隊員・上溝隊員・寒川隊員もなんとなくそれに気づいてます。

 でも、それは完全にオカルト。科学のすいを集めたテレストリアルガードでは、正々堂々論議する事柄ではありません。みんな、あえて触れないようにしてました。

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