君のテレストリアルガード 49
夜の街道を大島さんの愛車が走ってます。片側2車線の道路です。両側とも針葉樹林。灯は街灯以外、ほとんど見当たりません。
車内。大島さんがハンドルを握ってます。と、大島さんはふと助手席が気になりました。そしてつぶやきました。
「オレは幽霊てやつは信じない主義だったが、どうやらそれはあらためないといけないようだな」
なんと助手席には赤い女の子が座ってました。赤い女の子は赤いフードを目深に被ってます。赤い女の子は真っ直ぐ前を見て発言しました。
「あなたは重大なウソをつきましたね。すみれを改造してる技術者がサボタージュしてるのは事実ですが、実際サボタージュしてる技術者は半分。残り半分と医師団が協力して、すみれの身体は元に戻されてますね。
なんで香川隊長にウソをついたんですか? 制裁ですか?」
大島さんは応えません。赤い女の子の話が続きます。
「テレストリアルガードの未来を考えたら、あなたも消えた方がいいですね」
大島さんは今度は応えます。
「ふっ、どうする気だ? オレには女房はいない。当然子どももいない。親兄弟は6年前の戦争でみんな死んじまってる。天涯孤独だ。人質は取れないぞ。それにここでこのクルマを暴走させても、誰も巻き添えにはならんぞ。
さあ、どうする!?」
「じゃ、あなたにはとてつもない恐怖を与えましょう!」
と、赤い女の子はふっと消滅しました。が、大島さんは特に反応しません。が、次の瞬間、大島さんは驚き、慌ててブレーキペダルを踏みました。
「うぐっ!」
路上。大島さんの愛車が急ブレーキ。その先には巨大な影がありました。なんと赤い女の子が巨大化してそびえ立ってたのです。40mはありそうです。
大島さんは愛車を降り、見上げました。
「お、おい、マジかよ・・・」
赤い女の子は右脚を大きく上げました。大島さんの愛車を踏み潰す気です。大島さんは慌てて愛車から降り、その場を離れます。
グヴァーン 大島さんの愛車は踏み潰され、爆発しました。
「くっそーっ! なんなんだよ、これ?」
大島さんはジャケットの内側に手を突っ込み、すぐにその手を抜きました。その手には自動式拳銃が握られてました。
「喰らえーっ!」
大島さんはさっと振り返ると、拳銃を発射。1発、2発、3発・・・ 目標は巨大なので当たったはずなのですが、夜なので見えません。赤い女の子は大島さんを見下します。フードで眼は見えませんが、どうやら笑ってるようです。
「くそーっ・・・」
大島さんはガードロープを越え、歩道を横切り、さらに柵を越え、針葉樹林に入りました。
赤い女の子もその方向に歩き始めました。
「ふふ、逃がさないよ」
針葉樹林の中を必死に逃げる大島さん。
「くそーっ! くそーっ! くそーっ!」
大島さんは走りながらスマホを取り出し、電話をかけました。
「あ、オレだ! 大島だ! 香川隊長を頼む! 早く!」
ここはテレストリアルガード基地サブオペレーションルーム。隊長が固定電話の受話器を上溝隊員から受け取ったところです。
「香川だ」
林の中、全速力で駆けている大島さん。
「怪獣だ! 今怪獣に襲われてるんだ! 助けてくれ!」
隊長は呆れたという顔で、
「あは、おまえ、何呆けたこと言ってんだ?」
駆けている大島さん。
「怪獣は赤い女の子だ!」
この一言を聞いて隊長の顔色と声色が変わりました。
「わかった」
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