君のテレストリアルガード 47
大島さんの話が続いてます。
「ところで、その会議には新米の与党議員が1人参加しててね、16人目の死者は彼になりそうだった。けど、次期隊長はその最後の弾丸を自分に使った。彼は命拾いしたんだよ。
その新米議員は次期隊長が自殺した直後、赤い女の子を見たというんだ」
橋本隊員。
「ふっ、ようやく本題が出たな。しかし、なんだ、そりゃ?」
大島さん。
「新米議員によると、赤いマント、赤いフードをかぶった小さな女の子を見たんだそうだ。だが、自分もあの会議室にいて事件の一部始終を見ていたが、そんな赤い女の子はまったく見てないんだ。
その新米議員には3人の子どもがいたそうだが、警察の話だと、その事件が起きたとき、その3人の子どもが同時に泡を吹いて苦しみながら倒れたというんだ。警察は毒を盛られとにらんでるようだが、新米議員は赤い女の子の呪いだと思ってる」
橋本隊員。
「その新米議員が修羅場で幻影でも見たんじゃないのか?」
大島さん。
「まあ、自分もそう思ったが、先日起きた暴走事件でも、城所弁護士は赤い女の子を見たと言ってたな。やつがクルマを運転してたら、突然助手席に現れたそうだ。次の瞬間クルマが暴走を開始したらしい。だが、路上の監視カメラで確認したが、助手席にはそんな女の子は映ってなかった。
城所弁護士とあの議員が同じ幻影を見た。これは偶然じゃないだろ」
大島さんはここで声色を変えました。
「ところで・・・ この2つの事件で利益を得る団体はどこだと思う?」
隊長が応えます。
「まあ、うちだろうな」
橋本隊員。
「あほらし。そんなオカルトじみた話、だれが信じるというんだ?」
大島さん。
「ふふ、そうだな。誰も信じないな。
でもなあ・・・ 前々から不思議に思ってんだ。テレストリアルガード作戦部門初代隊長も、2代目隊長も、3代目隊長も、ある日突然なんの脈略もなく錯乱状態に陥って、周りの人を巻き込んで自殺してる。今回の次期隊長と同じ。だれかが裏から糸を引いてるとしか思えないんだ」
大島さんは隊長をにらみました。
「香川隊長、それはあなたじゃないんですか?」
橋本隊員が呆れました。
「おいおい。言いがかりにしちゃ、ずいぶん程度が低いんじゃないか? 何か証拠でもあるのか?」
大島さんは一言。
「ない」
橋本隊員は笑いながら、
「あはは、それじゃ、話にならんだろ!」
「ともかく今回、隊長交代の話はなくなった」
それを聞いて女神隊員はヘルメットの中、ほっとします。
大島さんは隊長の顔を見て、言葉を続けます。
「けど、すべてあんたの都合のいいようにはならんぞ!
あんたの大事な部下、黒部すみれは今、宙ぶらりんの状態だ」
隊長は顔色を変えました。
「どういう意味だ?」
「あんた、下島のあごを思いっきり蹴飛ばしたろ。それで彼はあごを骨折し、緊急手術になった。手術は無事に終了したが、それからしばらくして彼はテレストリアルガードをやめると言い出したんだ。一昨日のことだ。まあ、こんなひどい目にあったんだ。仕事が嫌になって当然だな。
でも、この情報はメガヒューマノイドセクションの開発者を落胆させた。みんな、一斉に辞めると言い出したんだよ。今彼らは仕事をサボタージュしてるよ」
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