君のテレストリアルガード 43

 土屋議員が大島さんの顔を見て、

「OK、じゃ、初めてください」

 大島さんが応えます。

「わかりました」

 大島さんは今度は正面を向いて大きな声で発言しました。

「それでは会議を始めます。私は司会進行役の大島です。今日の議題はテレストリアルガード作戦部門の隊長の交代。

 みなさんも知っての通り、テレストリアルガード作戦部門の香川洋和隊長は、技術開発部門の主任の1人を襲い、大けがを負わせました。また、在任期間も長くなってきたようです。そこで現隊長を解任し、新たに隊長を就任させることにしました。ここに新隊長を紹介します。

 吉沢信也君!」

 すると着席していたスーツの男が1人起立しました。大島さんが彼を紹介します。

「彼が吉沢君です!」

 吉沢次期隊長があいさつ。

「吉沢です。みなさん、よろしくお願いします!」

 次期隊長のあいさつが続きます。そんな中、土屋議員ぽつりとつぶやきました。

「そーいや、最近あの変なうわさ話を聞かなくなったなあ・・・」

 それに秘書が小声で応えました。

「香川隊長の意志にそぐわないアクションを起こすと、それを命令した人やその子どもが突然高熱にうなされるというアレですか? あれはたまたま偶然が重なっただけの、都市伝説ていうやつじゃないんですか?」

「う~ん・・・ 実際死んだ人もいるって話だが・・・」

 土屋議員は考え込みました。もしその都市伝説が真実なら、自分か自分の子どもが高熱にうなされ、死ぬかもしれない・・・ 実は土屋議員には息子が2人、娘が1人いました。これは気になります。

 吉沢次期隊長の演説が続きます。

「作戦部門の隊員は、今は8人、正確には1人亡くなったので7人ですが、私が就任したら法律が許す50人まで増やそうと思います」

 ここで会議に参加してる男性の1人が座ったまま質問。

「現在の隊員の処遇は?」

「香川隊長の元では所定の訓練はほとんど行われてないようです。彼らは怠惰になってます。これでは使えません。全員作戦部門から退いてもらう予定です!」

 同じ人が再び質問。

「そう言えば、宇宙人の女性がいましたよねぇ。彼女の処遇は?」

「彼女は巨大化できるし、破壊光線を発射できるし、テレポーテーションもできます。彼女の生体エネルギーは眼を見張るものがあります。この生体エネルギーを解析すれば、テレストリアルガードの兵器のパワーアップに役立つ可能性があります。そのために、彼女にはいろいろと実験につきあってもらいます!」

 今度は別の男性が質問。

「実験? どんな実験を? 気軽に受けることができる実験じゃなさそうですねぇ?」

「ふふ、まあ、たぶんかなりきつい実験になると思いますよ。最終的には彼女は死体になるでしょう。そうなったらそうなったで、死体を斬り刻んで肉体の構造を調べるつもりです」

 この一言で会議はざわつきます。同じ人の質問。

「しかし、相手は自らの生体エネルギーを破壊光線にして撃つことができるつわもの。テレポーテーションもできるし、どうやって拘束するんですか?」

 次期隊長はちょっと笑みを浮かべ、回答。

「薬ですよ。薬で仮死状態にして拘束します。仮死状態ならテレポーテーションも巨大化も破壊光線も無効なはず。何1つ問題は発生しませんよ」

「しかし、世間的にはかなり人気のある人ですよ。そんな人を殺したら、世間様が・・・」

「ふふ、彼女は宇宙人ですよ。彼女を守る法律は今の日本にはないのです。たとえ殺害して斬り刻んでも、法的問題は一切なし!

 ま、その際は母星に帰った、ということにしておけば・・・」

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