君のテレストリアルガード 41

 巨大な街。官庁街か? ビルとビルの間から夕陽がのぞいてます。

 ここはその中にある片側3車線の街道。車道にはたくさんのクルマが走ってます。その中の1台、アッパーミドルクラスの国産車。

 その車内。運転席にスーツ姿の城所弁護士。他に乗員はいません。城所弁護士は上機嫌らしく、笑みを浮かべてます。

 信号が黄色、そして赤になりました。城所弁護士の愛車は停車しました。城所弁護士の愛車は停止線の直前。目の前の横断歩道をたくさんの人が渡り始めました。

 城所弁護士の愛車車内。城所弁護士はつぶやいてます。

「あともう少し、あともう少しでテレストリアルガードは解散になる。ふふ、オレをバカにした罰だ。あははは、ザマーミロ!」

 城所弁護士は高笑い。が、ここで、

「私はあなたが嫌いです」

 突然のその声に城所弁護士はびっくり。

「え?・・・」

 いつの間にか助手席に人が座ってました。赤いマント、赤いフードの小さな女の子です。女の子は正面を向いたまま、しゃべりました。

「あなたに罰を与えましょう」

 グォーン! 城所弁護士の愛車のエンジンが突然吹き上がりました。足下からはホイールスピンの音。驚く城所弁護士。

「な、何?」

 次の瞬間、城所弁護士の身体は強烈なGを感じ、シートに押し付けられました。城所弁護士は驚くしかありません。

「うわっ!」

 城所弁護士の愛車が急発進。眼の前にはベビーカーを押してる女性が。城所弁護士の顔がひきつります。

「うわーっ!」

 ベビーカーを押してる女性の顔もひきつってます。次の瞬間、城所弁護士の愛車がベビーカーごと女性を跳ね飛ばしました。

 クルマは止まりません。そのままものすごいスピードで街道を突っ走ります。

「うわーっ! なんだよ、これーっ? 止まんねーよーっ! 止めろっ! 止めろっ! 止めてくれーっ」

 助手席の赤い女の子は薄ら笑いを浮かべます。

 次の交差点の信号も赤で、たくさんのクルマが信号待ちしてます。その最後尾のクルマが迫ってきました。城所弁護士の悲鳴が響きます。

「うぎゃーっ!」

 ここで城所弁護士の愛車は急に左に曲がりました。そこはビルとビルの間の路地。でも、城所弁護士の愛車は路地には入らず、その直前で急に右折。今度は歩道を猛スピードで走り出しました。突然歩道に暴走者が侵入してきたもので、歩道にいる人々は悲鳴をあげました。城所弁護士の愛車はその人々を次々と撥ねて行きます。中にはランドセルを背負ってる児童もいました。

 車内。叫ぶ城所弁護士。

「やめろーっ! やめてくれーっ!」

 撥ねられた人の中には、城所弁護士の愛車のフロントガラスに向かって飛んでくる人もいました。城所弁護士は思わず顔を背けました。

「うわっ!」

 その人の身体はフロントガラスに激突し、大きく空中に舞います。フロントガラスは粉々に砕け散りました。城所弁護士は悲鳴のような声をあげます。

「うぎゃーっ!」

 城所弁護士はブレーキペダルをずーっとベタ踏みしてますが、愛車はぜんぜん止まりません。

「くそーっ! くそっ、くそっ、くそーっ!」

 ここで城所弁護士はひらめきました。

「そーだ!」

 城所弁護士はブレーキを踏む足を一回緩め、再びベタ踏み。すると愛車は急停止しました。ほっとする城所弁護士。

「と、と、止まった・・・」

 が、そこは大きな街道と大きな街道の交差点内の横断歩道。左側から巨大なトレーラートラックが走ってきました。それに気づいた城所弁護士の顔からさらに血の気が引きました。

「う、う、うわーっ!」

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