君のテレストリアルガード 40
隊長は横目で女神隊員を見ました。女神隊員は立ったままテレビを見てます。かなり茫然としてます。
「もしこいつの暴走の原因がオレのクビではなく、テレストリアルガードの解散だったら・・・」
隊長は朝焼けの焼野原となった山中でストーク号とヘロン号に対峙してる巨大化した女神隊員を思い出しました。
「こいつと初遭遇したとき、オレたちはこいつを簡単に拘束することができた。けど、あれ以降こいつは、オレたちにずーっと寄り添ってきた。オレたちのクセやテレストリアルガードのスーパー兵器はすべて熟知してるはずだ・・・」
隊長は巨大化した女神隊員とスペースストーク号が対決したシーンを思い浮かべました。
宙に静止してるスペースストーク号に突進する女神隊員。その手には巨大な剣があります。ショートジャンプ(テレポーテーション)するスペースストーク号。振り向き、片手で剣を振り下ろす女神隊員。ジャンプアウトしてきたスペースストーク号の鼻先にその切っ先がヒット。スペースストーク号が墜落。
現在の隊長が思いました。
「あいつ、あのときスペースストーク号がどこにジャンプアウトしてくるのかわかっていた。あれをやられたら、オレたちは防ぎようがないな。自衛隊も話にならんだろう」
隊長は再び横目で女神隊員を見ました。
「あいつを暴走させてはだめだ。東京・・・ いや、日本中の街はあいつにめちゃくちゃにされるぞ。テレストリアルガード解散を阻止しないと!」
隊長は出入り口の自動ドアに向かって歩き出しました。上溝隊員がそれに気づき、
「あ、隊長、どこに?」
隊長は歩きながら上溝隊員を一べつし、
「トイレ」
引き分けの自動ドアが開き、隊長が廊下に出ました。
テレストリアルガード基地地下廊下を隊長が歩いてます。隊長が角を曲がりました。そこでストップ。隊長は裾のポケットに右手を入れ、ガサゴソと手探り。そして手を出しました。その手は何かを握ってます。その握りこぶしを開けると、そこには小さな石が。呪い石です。
隊長は先ほどこの呪い石を海老名隊員の私室の小さな引き出しに収納しました。が、実は収納してなかったのです。呪い石を小さな引き出しに収納する直前、左回転で振り返りましたが、そのとき右裾のポケットに呪い石を入れたのです。女神隊員には死角だったので、女神隊員は気づくことができませんでした。
隊長は掌の呪い石を見て、ぽつりとつぶやきました。
「ふっ、えびちゃんのいない世界、生きててもつまらないな・・・」
その瞬間隊長の前方からさっと手が伸びてきて、隊長の掌の上の呪い石をかすめ取りました。はっとする隊長。そのまま視線を上げると、そこには赤いマント、赤いフードの女の子が立ってました。そう、隊長を2度襲った赤い女の子です。女の子は以前と同じようにフードを目深に被ってて、その眼を見ることはできません。
「ええ?」
隊長は驚きの声をあげました。まだ呪いをかけてないのに、なんで現れた? けど、女の子に殺意はないようです。
「あなたはこんなことで死んではいけません」
どうやら赤い女の子がしゃべったようです。ただ、それは以前聞いた赤い女の子の声ではありません。隊長のよく知ってる声です。
「え、えびちゃん?・・・」
「最期までテレストリアルガードの隊長でいてください」
そう言い終わるや否や、赤い女の子は消滅しました。隊長は驚くしかありません。
「えびちゃんなのか? ああ・・・」
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