君のテレストリアルガード 33

 隊長は倒れてる下島さんを指さし、

「おまえ、頭蓋骨をチタン合金にしたら10トンの衝撃に耐えられると言ってたじゃないか!」

 隊長は下島さんに猛ダッシュ。

「なんでこの程度の衝撃であのは死ななくっちゃいけないんだよ!」

 隊長は下島さんのあごを思いっきり蹴っ飛ばしました。悲鳴をあげる下島さん。

「ぐふっ!」

「隊長、やめてください!」

 その隊長の身体を橋本隊員・寒川隊員・女神隊員が捕まえます。上溝隊員は口を押えて茫然と佇んでました。

 隊長は身体をよじり、3人を振りほどこうとします。

「うるせーっ! 離せ! 離しやがれ!」

 下島さんは口から激しく出血してました。

「うぐぐ・・・」

 下島さんは隊長とは反対方向に逃げ出しました。

「うわーっ!」

 隊長はその下島さんを見て、

「くそーっ! 待ちやがれーっ!」

 けど、隊長は3人に押さえつけられてるので、動けません。その隊長の前に大島さんが立ちふさがりました。

「あんた、いったい何考えてんだ! 彼はこの4月に主幹になったばかりだ。それ以前はエアジェットの研究をやってたんだ。彼は頭蓋骨をチタン合金に置換する技術とはなーんの関係もないんだ!」

 隊長は大島さんをにらみつけ、

「頭蓋骨をチタン合金に変えた方がいいと言ったのはあいつだろ!」

「それにOKを出したのはあなただ! 最終的に決断したのはあなただろ!」

 それを聞いて隊長は全身の力を弱めました。それを感じて隊長を押さえつけていた3人も力を抜きました。

「自分の感情をコントロールできない男がテレストリアルガード作戦部門の隊長をやってたなんて、驚きだ!」

 そういうと、大島さんは振り返り、そのまま歩いて行ってしまいました。隊長は立ったまま動きません。愕然としたままです。


 どれくらい時間が経ったのでしょうか? ここは病室、隊長はパイプイスに静かに座ってます。隊長の前には医療用のベッドがあり、そこに海老名隊員の身体が横たわってます。隊長はかつての海老名隊員のセリフを思い出してます。

「2人とも同一人物に襲われ、頭に重大なケガを負って、数日後に死にます」

 隊長はつぶやきました。

「ふふ、お前の予言はほんと、精度が低いなあ。数日後に死ぬって・・・ 即死じゃないか」

 隊長の側に心電図などのスコープがあります。隊長はそのスコープを見ました。

「人工心肺はなんの問題もなく動いてる。脈拍も血圧も呼吸もすべて正常。でも、脳みそだけは動いてないなんて・・・」

 隊長は海老名隊員の顔を見ました。健やかな顔です。

「ほんとうに・・・ ほんとうに死んでるのか?・・・

 ほんとうに死んでるなら白い布を被せなくっちゃいけないのに、まだ呼吸してるからそれもできないなんて・・・ やっぱまだ生きてるんじゃないのか?・・・

 すまない。処女のまま逝かせてしまって・・・」

 隊長は1つぶの涙を流しました。


 夕闇間近の時刻。空からぽつりぽつりと雨つぶが落ちてきました。ここは繁華街の路地裏。呑み屋が並んでるところです。

 雨が本降りになってきました。その中、傘をさした男性が今風の呑み屋の看板を見上げました。私服の橋本隊員です。橋本隊員は傘を閉じると、その店の中に入って行きました。

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