君のテレストリアルガード 34
店内。私服の隊長が4人がけのテーブルに1人座ってジョッキを傾けてます。ジョッキの中身はレモンサワー。
今隊長と相対するように、誰かが座りました。隊長ははっとしてその顔を見ました。それは橋本隊員でした。
「ふ、なんだ、お前か」
「隊長、つき合いますよ」
「ふふ、やめてくれ。オレは酒を呑み過ぎたせいで、糖尿病になっちまったんだ。うわばみみたいなお前と酒を呑んだら、糖尿病が悪化しちまうだろって」
テーブルの上には無数のジョッキが置いてあります。橋本隊員はそれを見て、
「ふふ、なにを言ってるんですか?」
隊長は眼の前を通り過ぎる店員を見て、持ってたジョッキを差し出し、
「あ、レモンサワー、も一杯!」
「はい」
橋本隊員もその店員を見て、
「あ、オレはビールで」
それから隊長は呑んで呑んで、呑みまくりました。眼はどんどんうつろになっていきます。と同時に、涙がいっぱい溜まってきました。と、おもむろに声を発しました。
「なあ、橋本」
橋本隊員は応えます。
「なんです?」
「なんでオレたちゃ、テレストリアルガードなんてところにいるんだ?」
「さあ。オレは給料がべらぼうにいいからいるだけですよ」
「あは、そっか・・・ お前は競馬ばっかりやってるもんな・・・ オレは・・・ オレはなあ・・・ あれ? なんだったっけ。あはは・・・
オレには子どもが1人いたんだ。とてもかわいい女の
オレは自分の娘の無念を晴らすためにテレストリアルガードに入った。そしたらまずメガヒューマノイド被験者を選定する係りに配属された。そこでえびちゃんを知ったんだ。
えびちゃんはユミル星人の水素核融合弾の爆風をまともに受けて、人の形をしてなかった。けど、ぎりぎりのところで生きていた。オレは不思議な気分だったよ。自分の娘は一瞬で死んでしまったのに、今目の前にいる女の子はなんとか生きようとしている。
生きろ! 生きろ! 生きろ! 生きろ! オレは毎日毎日願ったよ。そうしたらえびちゃんは目覚めてくれた。オレはとても嬉しかったなあ・・・
そんなに苦労したというのに、なんでいとも簡単に死んじまうんだ? ひどいよ。ひど過ぎるよ・・・」
ここで隊長の眼の前を店員が通りかかりました。隊長はその店員を見て、
「あ、もう1杯」
それからしばらくして、雨は土砂降りになりました。路地を橋本隊員と彼に肩を借りた隊長がずぶ濡れになりながら歩いてます。隊長は完全にヘベレケ状態。そこにヘッドライトが。テレストリアルガードのカラーリングが施されたセダンです。運転席の窓が開き、寒川隊員が顔を見せました。
「あ、橋本さん。店の中で待ってればよかったのに」
橋本隊員が応えます。
「いや、わざと雨に濡らしたんだよ」
橋本隊員は横目で隊長を見て、
「失禁しちまったんだよ」
「ええ?・・・」
「バスタオル持ってきたか?」
「ええ、言われた通り」
「じゃ、後部座席に敷いてくれ」
「はい」
寒川隊員はセダンの後部座席にバスタオルを敷き、橋本隊員はそこに隊長の身体を座らせました。橋本隊員は助手席に乗り込み、先に運転席に座ってた寒川隊員を見て、
「行こう。雨に濡れて寒いわ」
「はい」
セダンが走り出しました。後部座席の隊長はもう眠ってるようです。
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