赤ン坊殺しの英雄 20

「でやーっ!」

 田村佐恵子の日本刀のような武器が橋本隊員の胸を捉えます。ズバッ! 田村佐恵子の日本刀のような武器は完璧に橋本隊員の身体を斬ったように見えました。しかしです。田村佐恵子は不自然な手応えを感じました。

「う?」

 田村佐恵子は着地すると、振り返りました。そして武器を握る自分の手を見て、

「な、なに、この不可思議な手応え?・・・」

 橋本隊員は尻もちをついてましたが、その状態で身体を捻り、田村佐恵子を見ました。そして不気味な笑みを見せました。

「ふふ、残念」

 なんと橋本隊員の胸は無傷です。橋本隊員はさっと立ち上がりました。

「悪いな。このスーツは1着1億円以上もする超高級品だ。そんなナマクラじゃ、絶体斬り裂けんぞ!」

 橋本隊員は左掌で自分の胸を押さえ、

「しかし、意外といい筋じゃないか。結構痛かったぞ」

 橋本隊員は田村佐恵子にレーザーガンを構えました。

「今度はこっちの番だ!」

 が、

「ちっ」

 と舌打ちをしたまま、フリーズしてしまいました。田村佐恵子はそれを不思議に思います。

「ん、なんで攻撃してこない?」

 と、田村佐恵子は横目で後ろを見ました。田村佐恵子の背後には、たくさんのヤジ馬とそれをガードする警官隊がいました。

「ふふ、そっか。私が避けたらヤジ馬に当たって死人が出るか。じゃ・・・」

 田村佐恵子は横を向いて歩き、そして止まりました。ここだと背後にヤジ馬の姿はありません。

「ここならいいか? さあ、思う存分レーザーガンを撃ってこいよ!」

 橋本隊員はそれを聞いて、

「ふざけやがって・・・」

 田村佐恵子はニヤッとして、

「お互い正々堂々殺し合おうじゃないか!」

 と言うと同時に、田村佐恵子は背中のエアジェットを点火させ、猛ダッシュ。

「死ねーっ!」

 と言うと、日本刀のような武器を振り上げました。

 橋本隊員はレーザーガンを連射。田村佐恵子から見たその橋本隊員。やはり眼とレーザーガンを握る手が四角くマーキングされてます。と同時に、計算プログラムが視界の片隅に現れました。

「何発撃ってもムダ! ムダ! ムダーっ!」

 田村佐恵子はジグザグに飛んでその光弾すべてを避けます。そして橋本隊員の顔に照準を定めました。橋本隊員はその視線を見て、

「やっぱ顔を狙ってきたか!」

 橋本隊員はボクサーの防御のように、両手で顔をガード。田村佐恵子はその両手めがけ日本刀のような武器を真横に振り抜きました。

「てやーっ!」

 ブサッ! 血しぶきが飛びました。なんと1着1億円以上のテレストリアルガードの隊員服が斬り裂かれ、橋本さんの両手が斬られたのです。

「うぐぁっ!」

 橋本さんは思わず悲鳴をあげました。両手の刀傷は骨の側まで達したようです。田村佐恵子はそれを見て笑いました。

「あはは、何が1億万以上の高級品だ。ただの役立たずじゃん!」

 飛行中の田村佐恵子は大きく円を描いて、再び橋本隊員に向かって来ました。

「今度は心臓を貫いてやる!」

 が、ここで巨大な光弾が飛んできて、田村佐恵子の右脇腹に命中。悲鳴をあげる田村佐恵子。

「うぎゃーっ!」

 田村佐恵子の身体は地面を転がりました。被弾した右脇腹のアーマーはひび割れてます。

「い、痛い!・・・」

 田村佐恵子は右脇腹を押さえながら立ち上がり、光弾が飛んできた方向を見ました。そこにはサブマシンガン程の大きさのレーザーガンを持った倉見隊員がいました。彼の側にいる隊長と寒川隊員も、同じ武器を構えてます。

「くそーっ! なんで私と橋本あいつの対決を邪魔するんだ! こっちは正々堂々闘ってんだぞっ!」

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