赤ン坊殺しの英雄 19

 バイクの上、女神隊員と海老名隊員の会話が続いてます。

「私、あの女と初めて戦ったとき、何発もあの女に光弾を喰らわしてやったんだけど、ぜんぜん当たらなかった。やっぱ、自分の生体エネルギーじゃないとダメみたい」

「あは、そうなんだ」

 2人を乗せたバイクは現場に向かって疾走します。ただし、制限速度で。何分女神隊員はバイク無免許。速度違反で警察に掴まったら大変です。

 ちなみに、海老名隊員はバイクの後ろに乗ったのは今日が初めて。どれくらいのスピードで走ってるのか、体感的にまったくわかりません。そのせいか「遅い」という文句はありませんでした。


 田村佐恵子が籠城してるプレハブ小屋がある造成地。今ここにテレストリアルガードの車両が入ってきました。さっそくマスコミの報道カメラマンが警官の制止を振り切ってその車両の前に飛び出し、車両を激写。車両はそのカメラマンをかすめるように猛スピードで通過していきます。

 プレハブ小屋の数十m手前にテレストリアルガードの車両が急停車。4つのドアが開き、それぞれ隊長、寒川隊員、橋本隊員、倉見隊員が降車しました。4人ともヘルメットを被ってます。

 橋本隊員はプレハブ小屋に向かって叫びました。

「おい、田村佐恵子、来てやったぞ!」

 するとプレハブ小屋のドアがバーンと開き、田村佐恵子が現れました。

「ふふ、来たな、橋本! 積年の恨み、今こそ晴らしてやる!」

 田村佐恵子は橋本隊員に向かって力強く歩き始めました。その背後、小屋の中にいたカメラマンはその田村佐恵子を撮影してますが、それ以外のカメラクルーは園児たちを外に逃がしてます。

「さあ、早く逃げて!」

 園児たちは外で待っていたお母さん・おじいさん・おばあさん・お父さんのところに次々と駆けていきます。


 橋本隊員に向かって歩いてた田村佐恵子は歩みを止め、橋本隊員に質問しました。

「須賀至と長瀞瑞樹はどうした?」

 橋本隊員は応えます。

「須賀至は今北海道にいる!」

「ふふ、そっか。じゃ、あんたを殺したあと、北海道に行って殺してやるよ!

 長瀞瑞樹は?」

「自殺した」

 それを聞いて田村佐恵子は一瞬フリーズ。

「え・・・」

 けど、すぐに我に返って、

「ほんとか?」

「ああ、ほんとだ。毎晩うなされてたようだ」

 いえいえ、橋本隊員はそんな情報は得られてません。つまり、ウソ。ま、自殺したんだから、毎晩何かにうなされていたとしてもおかしくないのですが。

 田村佐恵子は残念そうな顔を見せました。

「そっか・・・」

 と、ここで田村佐恵子の眼がキッときつくなりました。

「ふっ、今はあんた1人で十分! さあ、行くよーっ!」

 田村佐恵子の背中のエアジェットが点火。そのまま橋本隊員に向かって猛発進。日本刀のような武器を振り上げます。

「うおーっ!」

 橋本隊員はさっとレーザーガンを構えました。それを凝視してる田村佐恵子の眼。今橋本隊員の眼と拳銃を握る手が四角くマーキングされました。と同時にたくさんの計算プログラムが視界に現れました。

「ふふ、見える!」

 橋本隊員がレーザーガンを連射。空中の田村佐恵子はそれを次々と避けます。焦る橋本隊員。

「ちっ! やっぱ避けるよ、こいつ?・・・ なんで避けられるんだ?」

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