魔法少女にはまだ早い 28

 が、ここで、

「やめろーっ!」

 の声が。なんとゲオルギウスは数多あまたの小学生たちに囲まれてました。全員ジェニーが通ってる小学校の児童です。いや、児童だけではありません。前掛けをした八百屋のおばちゃん。町工場の汚れた作業服のおじさん。きちんとした身なりの品のいいおばあちゃん。役所の人たち・・・ この町の大半の人がゲオルギウスを囲んでました。焦るゲオルギウス。ここで先頭にいた男子児童が叫びました。

「ジェニーはぼくたちの大事な友達だ。お前の好きなようにはさせないぞ!」

「こ、こいつら・・・

 ふふふ、魔女を助けようとしたものは全員魔女だ。成敗してやる!」

 ゲオルギウスは十字架を振り上げました。そして、

いかずちをーっ、えいっ!」

 と気合を入れ、十字架を振り下ろしました。けど、何も起きません。再び焦るゲオルギウス。

「バ、バカな! 何が起きてるんだ?・・・」

 と、ゲオルギウスの顔を影が横切りました。

「む?」

 ゲオルギウスが空を見上げると、そこには鳳凰が飛んでました。その鳳凰がゲオルギウスを見て発言。

「ふっ、残念。オレが飛んでる限り、かみなりは絶対落ちないんだな!」

 今度はゲオルギウスのところだけ吹雪が。

「うう・・・ な、なんなんだ、これは?」

 ゲオルギウスが前方を見ると、そこにに雪女ならぬ、雪少女が立ってました。雪少女だけではありません。九尾の狐、幼い狼男。ギャルぽい吸血鬼・・・ それらはジェニーに救済された妖獣や魔人でした。ジェニーの絶体絶命の危機に、モンスターまでもがここに駆け付けたのです。

 雪女はゲオルギウスを指さし、

「ジェニーは私たちの恩人だ!」

 今度は幼い狼男の発言。

「ジェニーお姉ちゃんがいなかったら、ボクたちは消滅していた。今こそ恩返しを!」

 後退りするゲオルギウス。

「く、くそーっ・・・」

 八千代刑事がガソリンスタンドの店員らしき人物に肩を借りて、みんなの前に出ました。

「お前、まだわからんのか? ジェニーは悪い魔女じゃない。みんなの友達の魔女だ! じゃなきゃ、こんなに友達が集まらんだろ!」

 ゲオルギウスも反論します。

「何が友達だ! 魔女は魔女だ! WBG《ウィッチバスターグループ》のリストに載った魔女は、どんな妨害があろうと、全部潰す!」

 と、ここでゲオルギウスの胸の中のスマホが鳴りました。はっとするゲオルギウス。

「な、なんだ、こんなときに?・・・

 ま、待てよ。この呼び出し音はEU法王庁の・・・」

 ゲオルギウスは慌ててスマホに出ました。

「もしもし・・・」

「ゲオルギウスよ、私だ」

 ゲオルギウスは唖然。

「こ、この声は、法王様?・・・」


 ここはEU法王庁の建物内。法王様が固定電話に出ています。その背後には少女の姿があります。金髪の少女。年齢はジェニーとほぼ同じでしょうか。

 法王様は受話器に向かって、

「ジェニーの名はWBG《ウィッチバスターグループ》のリストから削除した。すぐ帰国するんだ」


 スマホを握るゲオルギウス。その顔は苦虫をかみつぶしたような顔です。

「く・・・」

 ゲオルギウスはそのままグーンと飛びあがりました。ゲオルギウスの姿はあっという間に青い空に消えました。それを見てみんな大喜び。大歓声が起きました。

「やったーっ!」

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