魔法少女にはまだ早い 23

 大神さんは表向きは平静を装いました。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ・・・」

 大神さんは飛行中の少女を横目で見て、

「見ての通り、今飛行実験中なんだ。あのを着地させていいか?」

 真ん中の刑事さんがそれに応えました。

「わかった。それくらいならいいだろう」

 大神さんは左手で自分のジャケットの左襟を掴み、右手を胸の中に入れました。3人組の1人がそれを怪しく思いました。

「何をする気だ?」

 大神さんは何食わぬ顔で、

「あのに着陸するよう、専用の無線機で連絡するんだよ」

 いや、そんな無線機はありません。実際連絡するときは、スマホの専用アプリを使います。

 大神さんの右手が何かを掴み、大神さんはニャッとしました。次の瞬間、大神さんの右手がさっと胸の中から飛び出てきました。バキューン! 真ん中の刑事さんの頭が大きく仰け反りました。拳銃です。大神さんが拳銃を抜いて、それで刑事さんの額を撃ったのです。

 びっくりする香川さん。少女もはっとして、銃声がした方向を見ました。

 残る2人の刑事さんは、慌ててジャケットの内側に手を入れました。拳銃を取り出す気です。が、それよりも先に大神さんの拳銃が火を噴きました。バキュン! バキュン!

「うぎゃーっ!」

「ぐわーっ!」

 2人の刑事さんも撃たれてしまいました。笑う大神さん。

「あはは。こうなったら全員ブッ殺してやる!」

「おい、大神!」

 その声にはっとして大神さんが振り向くと、香川さんが仁王立ちしてました。

「お前、ついにしっぽを出したな!」

「ふっ、お前も片づけてやる!」

 大神さんは香川さんに向け、拳銃を発射。香川さんは慌てて真横にあった草むらにごろんと逃げ込みました。

「お、おい、マジかよ・・・」

 次の発砲があるかもしれません。香川さんは慎重に草むらから顔を出しました。すると、なんと大神さんは自分とは反対方向に駆けてました。

「あ、あのバカっ!」

 香川さんは慌てて大神さんを追い駆けました。


「くそーっ! くそーっ! くそーっ! いったいどこでバレたんだ?・・・」

 大神さんは悔しがりながら走ってます。

 大神さんの眼の前に段差が見えてきました。1mほどの段差です。大神さんはその段差を飛び降りました。飛び降りるとすぐさま振り返り、そこにあった不自然に盛られた草や落ち葉をかき分けました。するとブルーシートが現れました。大神さんがブルーシートをめくると、そこからオフロードタイプのバイクが現れました。大神さんはニヤっと笑いました。


 草原を駆ける香川さん。と、突然のエンジン音。はっとする香川さん。香川さんの数メートル先にある段差の向こうから1台のバイクが走り出しました。大神さんがバイクに乗って走り出したのです。地団駄を踏む香川さん。

「くそーっ!」


 大神さんのバイクは草むらに悪戦苦闘してました。

「く、くっそーっ! 走りにくい・・・」

 大神さんの眼の前に砂利道が見えてきました。

「よし! あそこまで行けば・・・」

 バイクが砂利道に出ました。ここからは快調に走れます。なお、大神さんはヘルメットを被ってません。

 大神さんは走りながら跨ってるバイクを見て、

「ふふ、万が一を考え、こいつを用意しておいて正解だった!」

 そこに、

「大神さん!」

 の声が。大神さんがはっとして右側を見ると、少女がサイドバイサイドで飛行してました。

「いったい何を?」

「うるせーっ! お前には関係ないだろ!」

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