魔法少女にはまだ早い 22

 この光景をちょっと離れたところから見てる人影があります。香川さんです。

「ついに飛行実験開始か・・・ しかし、本人の意志とは無関係にスマホのアプリで飛ばせるとはねぇ・・・」

 なお、少女、香川さん、大神さん以外、ここに人はいないようです。少女の身体は国家最高機密。なるべく世間に漏らしたくないようです。

 香川さんと大神さんの服装ですが、香川さんはテレストリアルガードの隊員服、大神さんはジャケット。2人ともいつもの服装です。

 と、香川さんはふとあることに気づきました。

「む、スマホでも飛行できる?・・・ もしかして胸の爆弾は、スマホでも遠隔操作できるんじゃ?・・・」

 香川さんは慌てて背の高い草むらの陰に入り、自分のスマホを取り出し、スマホにタッチ。電話です。

「もしもし、あ、出縄か?」

 スマホからの音声。

「おお、ちょうどいい! 今そっちに電話をかけるところだったんだ。

 よく聞けよ。例の爆弾、遠隔操作でも爆破可能だったぞ!」

「や、やっぱり!・・・」

「解析結果を言うぞ。飛行速度が時速500キロに達すると、その5分後に左側のエアジェットユニットが自動的に爆発する仕組みになっていた」

 ちなみに、その爆弾はすでに解除してあります。

 香川さんの質問。

「遠隔操作で作動する爆弾は、その爆弾が爆発しなかったときの保険?・・・」

「ああ。たぶんな。

 遠隔操作用の爆弾は右側のエアジェットユニットの中に入ってる。悪いことにその爆弾には解除コードはないんだ」

「え?」

「スイッチを入れたら5分後に爆発する仕組みになってる。スイッチはたぶんスマホだな。大神のスマホに気を付けろ!」

「わかった!」

 スマホを切る香川さん。その眼の前を小さな人影が横切りました。それは宙に浮く少女でした。

 少女はいやいや空を飛んでました。当然低速。両腕、両脚の姿勢制御用のエアジェットを使わないと姿勢を保てないほどの低速でした。

 けど、空を飛ぶ。それは少女の夢でした。低速で飛んでるうちに少女はだんだんやる気になり、ついに背中の1対のエアジェットノズルが大きく点火。少女のスピードは一気に上がりました。少女の憮然とした表情は、次第に明るくなっていきました。

「あは、やっぱり空はいいや!」

 それを見上げてる大神さん。

「ふふ、その調子、その調子。もっと、もっとスピードを上げろ!」

 さらにスピードを上げる少女。大神さんはスマホを見てます。

「450キロ、480キロ、490キロ、500キロ・・・

 あはは、ついに500キロを越えたぞ。これであいつは5分後に木端微塵だっ! ザマァーっ!」

 大神さんはほくそ笑みながら、ジャケットの右サイドポケットにスマホを入れました。と、ここで大神さんの後ろから声が。

「大神恭介さん!」

 大神さんははっとして振り返りました。そこにはジャケット姿のいかにもそれらしい3人組の男がいました。大神さんは思わず大声を発しました。

「な、なんだ、お前ら? ここはうちらが借り切ってるはずだぞ、今日は! 出てけっ!」

 その怒鳴り声に香川さんがはっとし、その方向を注視しました。

 3人の内、真ん中の男が一歩前に出ています。その男が1枚の紙を大神さんに提示してます。捜査令状のようです。

「我々は警視庁のものです。あなた、偽名を使って航空券を入手しましたねぇ。その件でお話があるのですが」

「え・・・」

 大神さんは焦りました。それは事実だったからです。

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