魔法少女にはまだ早い 21

 少女と香川さんの会話が続いてます。少女の質問。

「ところで、すみれていう女をどう思ってるんですか、香川さんは?」

「あ、あれか・・・」

「私が目覚めた次の日、香川さん、ずーっとあの女に付きっ切りでしたよね」

「オレからしてみりゃ、君は大事な娘だし、すみれっても大事な娘だ。あの日君が目覚めた。なら、次はすみれっての目覚めに期待して当然じゃないのか?」

 少女はその返答に反応しようとしましたが、ここで固定電話が鳴りました。香川さんはその電話に出ました。

「はい・・・」


 出縄さんの家の中、ディスクトップコンピューターの前に出縄さんが座ってます。出縄さんはナイトガウンを着ています。右手にはスマホがあり、今電話として使ってました。

「お~い、準備できたぞ!」

 少女の病室。香川さんは右手に受話器を持ち、左手にセンサーの棒を持ってます。

「じゃ、今からセンサー棒をえびちゃんの胸にかざすぞ」

 香川さんは少女の顔を見て、

「行くぞ!」

「はい!」

 少女はベッドに寝転びました。香川さんはその胸にセンサー棒をかざし、そのまま腹の方向にゆっくり移動させました。香川さんは受話器に、

「よし、かざしたぞ!」

 受話器から出縄さんの声。

「OK!」

 出縄さんの部屋。出縄さんが両手でパソコンのキーボードを叩いてます。ディスプレイに診断結果が出ました。出縄さんはスマホを持ち、

「う~ん・・・ やっぱ爆弾は解除されてるなあ・・・」

 少女の病室。電話に出ている香川さん。

「いや、そんなことはないはず!」

「その匿名の電話、信じていいのか?」

「もちろん!」

 ちなみに、匿名の電話というのは真っ赤なウソ。少女の超能力を隠すための方便でした。

 出縄さん。

「じゃ、もう少し解析してやるよ。どーせ今日オレ、休みだから」

「すまないな」

 香川さんは電話を切りました。香川さんは少女を見て、

「聞いての通りだ。爆弾はやっぱり解除されてるそうだ」

「そ、そんなことないよ! 私の胸の爆弾は今日爆発します!」

「ともかく証拠がないと・・・ 今日の飛行テストは受けないといけないな」

 少女は憮然とした表情を見せました。


 風が吹き抜ける曇天の大草原の中、まったく草が生えてない部分に小さな人影が立ってます。赤い電子の甲冑をまとった少女です。少女は夢で見た自分とまったく同じ姿になってました。その横には大神さんがいます。大神さんはちょっとイライラしてます。

「おい、まだ飛べないのか?」

「すみません。ずーっと飛べ、飛べって頭の中では念じてるんですよ・・・」

 大神さんは心の中で「ちっ!」と舌打ちをしました。

 実は今飛行実験中。けど、少女はぜんぜん飛ぶ様子がありません。当たり前です。少女は空を飛ぶと胸が爆発すると真剣に思ってます。だから飛ぶ気がまったくないのです。

 でも、大神さんにも事情がありました。大神さんはかなり厳しい眼をして思いました。

「おい、早くしろよ! 飛行機が出ちまうだろ!」

 大神さんはスマホを取り出し、今度は声を発しました。

「仕方ないな。スマホで手助けしてやるよ」

 というと、大神さんはスマホにタッチしました。すると少女の背中にある1対のハッチが開き、そこからそれぞれノズルが出現。次の瞬間、そのノズルが点火。少女の身体がゆっくりと浮上し始めました。

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