魔法少女にはまだ早い 20

 寝室です。男女が裸でダブルベッドで寝ています。男の方は出縄さんです。枕元のサイドボードの上に置いたスマホが突然鳴りました。男女ともその音で眼を醒ましました。女の方がかったるそうに口を開きました。

「もう、いったい何時だと思ってんの~?」

 出縄さんがスマホに出ました。

「はい、もしもし・・・」

 出縄さんの口調もかなりだるそう。


 ここは少女の病室。香川さんが固定電話に出ています。後方にはベッドに腰かけた少女の姿もあります。

「オレだ。香川だ」

 受話器から出縄さんの声。

「お、おい、今何時だと思ってんだ?」

 香川さん。

「例の女の子の爆弾がまだ解除できてないと、たった今匿名の電話があった」

「バカ言うな。ちゃんと解除したぞ・・・

 いや、日付を跨ぐと自動的に復活するプログラムがあるからな・・・ もう1回試してみるか?」

「ああ、頼む。こっちはもうノートパソコンもセンサー棒も用意してあるぞ」

 出縄さんの寝室。出縄さんはベッドから降りました。フルチンです。持ってるスマホに、

「ちょっと待っててくれよ。すぐに用意するから」

 と言うと、ドアを開けました。女はその出縄さんを見て、

「あなた・・・」

 とつぶやきました。出縄さんは振り向き、

「悪いな。仕事だ」

 ドアが閉まりました。女はぽつりと言いました。

「仕事、仕事、大変な人・・・」


 少女の病室。香川さんは振り返り、少女を見ました。

「今すぐ見てもらうからな。安心しろ」

 少女の顔面はまだ蒼白のままでした。

「ほ、ほんとに大丈夫なんですか?」

「ふ、オレたちを信じろ」

「で、でも、私、2回も見ちゃったんですよ。2回も同じ夢を見るなんて・・・ 私の胸はやっぱり爆発する・・・」

 香川さんはワンテンポ置いて、

「オレはあの水素核融合弾で大事な娘を亡くした。愕然としたよ。生きてく気力を完全にくしたっけな・・・

 そんなとき君を紹介してもらった。娘は水素核融合弾の業火に消えたが、君はかろうじて生きていた。でも、ずーっと目覚めなかった。この小さな命、なんとかならないのか? と何度も何度も自問自答したよ。だから君が眼を醒ましたとき、とっても嬉しかった。

 君はそんな大事な女の子だ。絶対死なせない。約束するよ!」

 少女はちょっと顔を赤らめ、

「あは・・・ 私、香川さんの娘さんの代わりですか?」

「ああ」

「私は・・・ 私は香川さんのお嫁さんになりたいな」

 その発言に香川さんはちょっとびっくり。

「オレのお嫁さんになってくれるのか?」

「うん」

「けどなあ・・・ 君、いくつだっけ?」

「10歳」

「じゃ、8年待ってくれないか」

「え、女の人て16歳になったら結婚できるんですよね」

「オレはテレストリアルガードという公職をもらったんだ。そんな公人が16歳の少女と結婚したら世間様からめちゃくちゃ叩かれると思うぞ。18歳まで待ってくれないか?」

 その返答に少女は何も応えることができません。代わりにこんな発言をしました。

「あ、あの~・・・ 私、赤ちゃん産めるんですか?」

「ええ?・・・」

 しょ、小学生がする質問かよ? 思いがけない質問の連続に香川さんの心は慌ててます。けど、ここは真摯に応えないといけません。

「君の身体の7割は機械化されたが、生殖にかかわる部分は全部オリジナルのままだ。あ、生殖ていうのは、子どもを産むってことだ」

「じゃ、私、18歳になったら香川さんの赤ちゃんを産みます!」

 香川さんはまた顔を赤らめました。

「ふふ、期待してるよ」

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