魔法少女にはまだ早い 15
「きゃーっ!」
少女は悲鳴をあげて飛び起きました。
「お、おい、どうした?」
その声は少女の横に座ってた香川さんでした。少女は自分の病室のベッドに寝かされてました。手術が終わった状態で目覚めぬまま、今までベッドの中にいたのです。
少女は号泣します。
「私、死んじゃった! 死んじゃったよーっ!」
香川さんは少女の両肩を掴みました。
「落ち着け! 落ち着けって!」
少女はなんとか呼吸を整えました。そしてやっと現実に気づきました。
「こ、ここは?」
「君の病室だよ」
「え?・・・」
「君は今日・・・ いや、昨日手術を受けた。胸に推進器を埋め込む手術だ。君はそれから20時間寝ていたんだ」
「ええ?・・・」
少女はカーテンがかかる窓を見ました。どうやら外は朝のようです。
「じゃ、あれは夢?」
香川さんは少女の眼をハンカチで拭きながら、
「悪い夢を見たのか?」
「うん、私の胸が爆発しちゃった・・・」
「爆発?」
「初めて空を飛ぶ実験をした。最初は快調に飛んでたのに、途中で・・・」
「君のことだ。予知夢の可能性があるな」
「じゃ、私は初めて空を飛ぶ実験のとき、爆発して死んじゃうの?・・・」
香川さんはちょっと考え、
「爆発したとき、他に何か見なかったか?」
「え?・・・ そう言えば大神さんが笑ってた・・・」
「ええ?・・・ あの人は君の第2の父親みたいなものだぞ。なんで君が爆発したのに笑ってるんだ?・・・」
「で、でも、笑ってた・・・」
ちなみに、現時点で大神さんはこの病室にはいません。
香川さんは深く考え込みました。
「う~ん・・・」
香川さんは少女の顔を見て、
「ちょっと調べてみるか」
夕刻。と言っても、雨が降っていて、すでに上空は真っ暗です。ここはそんな暗闇とは無縁の繁華街。傘をさした香川さんが1人歩いてます。香川さんは今風の居酒屋の看板を見上げました。
「ここか・・・」
と言うと、香川さんはその店へ。すぐに、
「いらっしゃいませ!」
という女性店員の声が聞こえました。
なお、香川さんはいつもだとテレストリアルガードの隊員服を来てますが、今は普段着です。
居酒屋の店舗内の廊下です。女性店員に先導されて香川さんが歩いてます。
ここは個室です。今外から、
「失礼します」
との声が。ワンテンポ置いて障子戸が開きました。そこに先ほどの女性店員と香川さんの姿がありました。
「ふ、ようやく来たか」
その声はすでにこの部屋の中にいた男性のものでした。彼と相対してもう1人男性が座ってます。今声を発した男性は出縄洋介、黙って座ってる男性は入野京太郎。前者はテレストリアルガード技術開発部門の隊員、後者はテレストリアルガード法律部門の人間です。年齢は3人ともほぼ同じ。
2人の間にはテーブルがあり、すでに料理の皿やビールのジョッキが載ってました。
香川さんはテーブルに座ると同時に、女性店員の顔を見て、
「ウーロンハイを」
「わかりました」
障子戸が静かに閉まりました。
入野さんが香川さんに話しかけました。
「おいおい、言い出しっぺが一番最後に来るのか?」
香川さんは座りながら、
「ふっ、尾行されてるといけないから、遠回りしてきたんだよ」
「なんだよ、そりゃ? 誰が尾行するってゆーんだ?」
「テレストリアルガード」
「はぁ? お前、テレストリアルガードの隊員だろ? テレストリアルガードの隊員がテレストリアルガードに尾行されるっていうのか?」
すると出縄さんが、
「いや、オレも尾行されてないか、ここに来るまでずーっと気にかけてた」
「おいおい、お前まで・・・」
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