魔法少女にはまだ早い 14

 大神さんはその場を離れました。少女は顔を上に向けました。少女の背中にある1対のハッチが開き、それぞれエアジェットのノズルが現れました。そのノズルが点火。すると彼女の身体はゆっくりと浮上しました。少女は満面の笑みです。

「あは、浮いた!」

 が、空中で少女の体勢は崩れました。もがく少女。

「うわっ、うわわわわっ・・・」

 大神さんが声をかけます。

「両手と両脚の姿勢制御用のエアジェットを使うんだ」

「はい!」

 少女の両二の腕の外側の細長いハッチが開き、エアジェットのノズルが出現。さらに両ももと両すねの外側の細長いハッチも開き、ここからもエアジェットノズルが出現しました。計6つのノズルが点火。すると少女の身体は垂直になり、空中に静止しました。

「あはっ、留まった! すごーい!」

 少女はとてもうれしそうです。

 大神さんが大きな声で呼びかけました。

「よーし、飛んでみろ!」

「はい!」

 点火中の少女の背中のノズルがさらに大きく点火。少女の身体は急発進しました。物凄いGに少女はびっくり。

「うわっ!」

 けど、すぐにスピードに馴れました。

「あは、すっごーい!」

 少女は空中でスラローム。あまりにも軽快すぎて、思わず笑っちゃいました。

「きゃはははは!」

 少女は魔女ジェニーのように箒に乗って飛ぶつもりでしたが、これはこれでとてもうれしそうです。ちなみに、音はほとんどありません。まるで電気自動車のようです。

 地上では香川さんと大神さんが少女を見上げながら話し合ってます。香川さんが発言しました。

「ようやくここまで来ましたね」

「ああ、あなたがいい人材を見つけてきてくれて、ほんと助かるよ」

 香川さんは側頭部を掻き、

「ふふ、そっか。

 でも・・・ こんなに幼い子をメガヒューマノイドに改造したことがバレたら、マスコミは叩くだろうなあ・・・」

「結果的に両手両脚を失くした子どもを救ったんだ。そんなには叩かれんだろって。

 しかし、被検者候補に上がった人の半分は拒否・・・ 残りもメガヒューマノイドに不適合か、検査途中に死亡したか・・・ 1人でも被検者が見つかってよかったよ。これで日本の技術は大幅に前進したな」

 香川さんは軽快に飛ぶ少女を見て、1つ疑問が浮かびました。大神さんにその疑問をぶつけてみました。

「あんなところにジェットエンジンを付けたら、背中が燃えるんじゃないのか?」

「あはは、あれはジェットエンジンじゃないんだ。エアジェットだ」

「エアジェット?」

「燃焼してるように見えるけど、実は燃焼してないんだ。外気温とほぼ同じ温度なんだ。あれは半永久的に飛べるエンジンだ。ま、いろいろとあって細かいことは言えないが」

 香川さんは感心しきりです。

「へ~・・・」

 引き続き軽快に飛ぶ少女。それを見ていた大神さんがニヤッと笑い、思いました。

「ふ、そろそろかな?」

 ふと少女の胸から異音が。はっとする少女。

「え?」

 次の瞬間少女の胸が大爆発。飛び散る破片。それを見て愕然とする香川さん。

「ああ・・・」

 少女の身体は上半身と下半身に分かれてしまい、墜落していきます。その生気が消えかかった眼から見た大神さん。大神さんはほくそ笑んでました。

「笑ってる・・・」

 ガシャーン! 少女の上半身と下半身が地面に激突しました。

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