魔法少女にはまだ早い 7

 と、少女の耳に泣き声が聞こえてきました。少女ははっとしました。街道の歩道の上で小さな女の子が泣いてます。

「小さな女の子が泣いてる・・・ なんだろ?」

 少女は降りてみることにしました。

 大きく緩く螺旋を描いて降下。歩道から1メートル弱の高さで空中停止して、少女はひらりと箒を降りました。次の瞬間箒は微粒子のようになり、霧散しました。少女は泣いてる女の子に駆け付けました。

「どうしたの?」

 女の子は泣きながら応えました。

「お父さんが、お父さんがどこかに行っちゃったの・・・」

 迷子のようです。少女はとりあえず名前を訊くことにしました。

「あなたのお名前は?」

「香川まどか」

「ええ?・・・」

 香川まどかって、香川さんの娘さんと同じ名前? 香川さんは私と同じ年の娘がいたと言ってたような。で、でも、この子はどう見ても5~6歳? ちなみに、少女は今10歳。明らかに歳が違います。これはどういうこと?


 と、いきなりあたりが明るくなりました。ペパーミントグリーンな壁。どうやらここは病室のようです。パイプイスに座ってる人がいます。後ろ姿ですが、40代後半の男性のようです。特徴的なつなぎを着てます。少女は直感的に、これはテレストリアルガードの隊員服だと判断しました。

 男性の前にはベッドがあります。ベッドには女の子らしき物体が寝かされています。少女が女の子をのぞくと、全身包帯に代わる布で覆われていました。胸から3本のチューブが出ています。

 もしかしてこれは私? いや、違うようです。少女は両手両脚とも失ってますが、その人物は左手と両脚はありませんが、右手はありました。

 男性がぽつりとしゃべりました。

「今日も目覚めんか・・・」

 その声は聞いたことがある声でした。そう、香川さんです。じゃ、今目の前にいる女の子は誰? と、少女の脳裏にある名前が浮かんできました。

 すみれ。この女の子の名前はすみれ?・・・


 次の次の日、ドアがノックされ、香川さんが病室に入ってきました。

「お邪魔するよ」

 コンピューターに文字が出ました。それは少女の声です。

「香川さん、昨日は来ませんでしたね」

「ああ、テレストリアルガード発足の用意が忙しくってね」

「うそ!」

 その発言に香川さんはびっくり。少女は話を続けます。

「すみれって人に会ってたんでしょ?」

 香川さんから返答がありません。少女はさらに話を続けます。

「なんか不思議なんですよ。いろんなものが見えてくるんです。両眼がなくなった代わりに、心の眼が開いたのかもしれません。

 香川さんの亡くなった娘さんて、私と同じ年じゃないですよね」

「え?」

「6歳くらいかな?」

「ああ、6歳だった」

 香川さんは驚きの連続です。で、1つ試してみることにしました。

「私が着てるものがわかるか?」

「はい。テレストリアルガードのユニホームですね。つなぎになってる」

「そこまでわかるのか?」

「はい」

 香川さんが欲しがってた人材は、メガヒューマノイドの被験者。今目の前にいる少女は初めてその了解をもらった人材です。その少女が目的とは違うところで、凄まじい超能力を発揮して見せました。香川さんはただ驚くしかありませんでした。

 今度は少女から質問。

「すみれって人に会って、何をしてたんですか?」

「君はそのすみれって女の子、どう見える?」

「私と同じ寝たきり。意識がない・・・」

「ふっ、その通り」

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