魔法少女にはまだ早い 5

が、

「いや、信じてるよ」

 と、香川さんはワンテンポ置いて応答しました。肯定です。今の少女の疑問も文字になって現れたようです。少女は安心しました。

 香川さんは言葉を続けます。

「私もね、ちょっとそういうのに興味があってね・・・

 ところで、君はなんであんな離れた場所から発見されたんだ?」

「トラックに乗せてもらったんです。安全な場所まで運んでもらうと思いました」

「あは、そっか。小学校にいたはずの君がなんであんな場所から発見されたのかずーっと謎だったが、そんな理由があったのか。

 でも、君はガレキの中から発見されたそうだ。トラックには乗ってなかったそうだ」

「え?」

 少女はトラックの運転手の顔を思い浮かべました。あの人も死んでしまったのか?

 香川さんの質問が続きます。

「そろそろ昨日の応えを聞かせてもらおっか」

 昨日の質問の応え。それは少女の身体を回復させるために、宇宙傭兵部隊ヴィーヴルから供与された軍事技術を使うというもの。軍事技術を使う。つまり、この手術を行えば少女の身体は兵器となってしまうのです。

 少女は質問に質問で返しました。

「もし断ったら、私の身体はどうなってしまうんですか?」

「既存の地球製の義手や義足を取り付けるんだろうなあ?・・・ 義眼は・・・ 今の地球の技術じゃムリか・・・ ま、10年、20年経てばなんとかなるのかもしれないが・・・」

「もし、OKしたら?」

「ヴィーヴルの最先端技術の義手や義足や義眼を取り付ける。実はどの程度性能があるか私もまったくわかってないのだが、どうやら空も飛べるそうだ」

「空も?」

「ああ」

 そのとき少女の脳裏にあるアニメキャラクターが思い浮かびました。パトロール魔女ジェニー。

 ジェニーはヨーロッパ人と日本人のハーフの女の子。小学校3年生。母方は本来ヨーロッパの魔女の血族でしたが、いつの間にか魔女だった時代を忘れ、今は一般の人間として日本で暮らしてました。

 けど、ある日ジェニーは目撃してしまいました。男の人が妖魔に襲われていたのです。妖魔はジェニーに気づくと、ジェニーにも牙をむきました。そのときジェニーに眠っていた魔女の血が目覚め、ジェニーは正義の魔女に変身。妖魔はあっという間に片づけられてしまいました。

 妖魔に襲われていた男の人は、警視庁魔法課に所属してる八千代刑事でした。世界中に言い伝えられていた妖魔、妖獣、妖怪などが次々と復活。人類の脅威になってました。日本では警視庁に魔法課を設置。巫女やリリス、宇宙からやってきた少女などが妖魔と対決してました。

 八千代刑事はジェニーを魔法課にスカウトしました。こうして八千代刑事と魔女ジェニーの凸凹でこぼこコンビが結成され、2人はいくつもの難事件を解決していくことになりました。

 これは日曜日午前中に放送されてるアニメ番組。女の子には大人気の番組でした。少女もこの番組を見ていて、魔女ジェニーに憧れてました。

 ジェニーは箒に跨って空を飛ぶことができました。もし私の身体がヴィーヴルの技術で改造されたら、私も空を飛ぶことができるようになる。少女は妄想を膨らませました。

「君もパトロール魔女ジェニーを見ていたのか?」

 それは香川さんの発言でした。どうやら少女の思考が文字になって、コンピューターのモニターに現れていたようです。

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