魔法少女にはまだ早い 4

 トラックの前に交差点が見えてきました。すると運転手さんは左に方向指示器を出しました。少女はそれを見て、

「だめ、そっちに行っちゃ!」

 少女はハンドルにしがみつきました。運転手さんは慌てました。

「バ、バカ! 何するんだっ!」

 トラックは右に曲がりました。このときたまたま反対車線に車両はなく、トラックは無事右に曲がることができました。

 運転手さんは怒り心頭です。

「危ねーじゃねーか! お前、死ぬ気か?」

「あっちに行っちゃダメ! ミサイルはあっちに墜ちてくるんです!」

「お前な、オレはこれで飯を食ってるんだ! 一刻も早くこの荷物を届けなくっちゃいけないんだよ! お前の遊びにつきあってるヒマはないんだ!」

 運転手さんは横目で少女をにらみ、

「もし次邪魔したら、トラックから突き落とすからな。覚えてろっ!」

 運転手さんは今すぐにでもUターンしたい気分。でも、現在走ってる道は片側一車線。トラックは超大型。とてもUターンできるスペースはありません。とりあえず次の大きな交差点で曲がることにしました。

 けど、大きな交差点はなかなか見えてきません。運転手さんのイライラは加速。トラックのスピードも自然に上りました。

「くっそーっ!・・・」

 運転手さんがそうつぶやいた瞬間、トラックの後方で何かがピカッと光りました。その光がドアミラーに眩く反射し、運転手さんはびっくり。

「えっ?」

 ワンテンポおいてとてつもない風圧がやってきました。2人が乗った大型トラックはかなりの重量があると思われますが、その爆風に思いっきり吹き飛ばされてしまいました。

「うぎゃーっ!」

 少女も運転手さんもただただ悲鳴をあげるしかありませんでした。

 少女の記憶はここまででした。


「いやー、起きてんかな?」

 ドアが開く音がし、こんな声が。これは香川さんの声です。ここは少女が入院してる病室です。

「起きてます」

 少女は応えました。と言っても少女は現在声を出すことはできません。少女の声の代わりに、コンピューターのディスプレイに文字が出ました。

 少女はさっそく質問しました。

「私が通ってた小学校て、どうなりました?」

「全滅したよ」

 香川さんはまたもやストレートに応えました。この人はオブラートに包むて表現を知らないようです。香川さんは説明を続けました。

「爆風と衝撃波でシェルターの屋根が引っ剥がされて、続けてやってきた熱風で全員やられてしまったそうだ」

 少女はそれを聞いて思いました。ああ、やっぱあのシェルターは、水素核融合弾の爆風を防げなかった・・・

 少女は続けて、大親友を思い浮かべました。

「ともちゃん・・・」

 それはつぶやきでした。が、そのつぶやきはコンピューターのモニターに文字として表現されました。香川さんはそれを読みました。

「ともちゃんて?」

「あは、そこにあるコンピューターって、私がしゃべった言葉だけじゃなくって、思ったことまで文字になって現れるんですね。

 ともちゃんは私の無二の親友です。こんなことになるんなら、一緒に逃げればよかった・・・」

 香川さんの質問です。

「なんで君はあの小学校から逃げ出すことができたんだ?」

 少女はちょっと考えました。私の秘密をここでしゃべってもいいの? しゃべったところで、この人はそれを信じてくれるの?・・・

 自問自答はすぐに終わり、少女は応えました。

「私には未来が見える能力があるんです」

 それに対する反応がありません。少女は、

「ああ、やっぱり信じてくれないか」

 と、落胆しました。

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