第7章 魔法少女にはまだ早い

魔法少女にはまだ早い 1

 少女は眼を醒ましました。けど、何も見えません。声を発しようとしましたが、声も出ません。手を動かそうとしましたが、不思議な感覚です。まるで両手とも消えてしまったようです。両脚も同じ感覚。

「ん、ようやく目覚めたようだな」

 その声は左耳からでした。右耳は聞こえないようです。

「あなたは誰?」

 彼女は反射的にそう質問しました。けど、それは声にはなりません。でも、それに対応する返事はありました。

「私は香川洋和。テレストリアルガードの隊員だ。おっと、テレストリアルガードはまだ正式には発足してなかったな」

「私はどうなったんですか? なんで何も見えないんですか? なんで身体が動かないんですか?」

 彼女はまたもや心の声で質問しました。香川さんはそれに応えました。

「覚えてるかな? 君は被爆した」

「被爆?」

「ユミル星人が地球に50発以上の水素核融合弾をブチ込んできたんだ。ユミル星人が地球に水素核融合弾をブチ込んできたのは2回目だった。地球人もバカじゃない。そのほとんどを迎撃した。けど、何発かは地球に届いてしまったんだ。そのうちの1発が君の住む町の側に落ちてきた。君はその爆風に曝されたんだ。

 君はガレキの中から発見された。君が発見されたとき、身体中にコンクリート片やガラス片が刺さっていた。両眼球とも破裂してた。両腕もなかった。両脚もひどい状況で切断するしかなかった。胸もズタズタで、今は外付けの人工心肺でなんとか永らえてる状況だ」

「・・・ひ、ひどい」

 彼女は心の中でそうつぶやきました。さらに、

「なんで・・・ なんで、そんなひどいこと言うの? そんなの聞きたくないよ!」

「別に・・・ 事実は事実。それとも何か、君の身体が回復してから両手両脚がなくなったと聞きたかったか?」

 彼女は何も言えませんでした。香川さんは話を続けました。

「喉・・・ 声帯もやられたが、こっちは軽傷だった。うまくいけば次の手術で回復するそうだ。自分の声でしゃべられるようになるぞ」

「なんで私はしゃべってないのに、私の声が届いてんの?」

「君の言語野に電極を入れた。言語野とは脳の中の言葉をつかさどる場所だ。君が言葉を発すると、私の手元にあるパソコンに君の声が文字になって出る仕組みになってるんだ」

 香川さんはちょっと間を開け、話しを続けました。

「実を言うと、君の身体をある計画に使おうと思ってる、テレストリアルガードではね」

「計画?」

「ユミル星人第2次侵攻と同時に、我が国はヴィーヴルと契約した。ヴィーヴルとは宇宙の傭兵部隊のようなものだ。

 ヴィーヴルはあっという間にユミル星人を駆逐してくれた。さらにいくつかの軍事技術を供与してくれた。そのすべてが既存の地球の技術をはるかに凌駕してた。

 その1つに、人間の身体そのものを兵器に変えてしまう技術があった。メガヒューマノイドと言ってたな。これは論議になった。はたして健康な人間を兵器に変えてしまってもいいものなのか? ってね。そこで瀕死の重傷を負った者の中から被験者を人選することになった。で、君に白羽の矢が立った」

「私の身体を兵器にしてしまうんですか?」

「もちろん君の意志を尊重する。君がこの手術を断れば、この手術は中断する」

「私の両親はなんと言ってるんですか?」

 香川さんはまたもやストレートに応えました。

「残念だが、君の両親は死んだ」

「え・・・ 水素核融合弾ですか?」

「ああ」

 少女はまた黙ってしまいました。なかなか次の発言がありません。

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