私が愛した男《ひと》 26(終了)

 海老名隊員の後方から突然声が。

「海老名さん、ここにいたらRPGに狙われるんじゃないですか?」

 海老名隊員が振り返ると、そこには女神隊員が立ってました。たった今ペントハウスのドアから出てきたようです。女神隊員は前髪のウィッグだけで特徴的な単眼を隠してました。

 海老名隊員はちょっと微笑んで、

「ふふ、この建物より高い建物はこの周辺にはないから、RPGで狙われる心配はないですよ」

 女神隊員が海老名隊員に向かって歩き始めました。海老名隊員はそんな女神隊員に話しかけました。

「今日、私、とんでもないミスをしでかしました」

「え、何?」

「生理痛がぶり返したときがありましたよね、私の」

「ええ。テレストリアルガード本部の事情聴取を受けてたとき」

「隊長はあのとき襲われたんだと思います。あの生理痛はそれを教えてくれたんだと思います。それなのに私はそれに気づきませんでした。私、隊長の隊員失格です」

「そんなすごい能力を持ってる人、この星ではたぶん海老名さんだけですよ。次からはしっかりとすればいいじゃないですか」

 その女神隊員の発言に海老名隊員は黙ってしまいました。女神隊員は何気なく望遠鏡をのぞき込みました。そこには土星がありました。

「うわっ、すっごーい! あの星、鉢巻きしてるみたい!」

「それは土星ですよ。女神さんの星系には土星みたいな惑星はないんですか?」

「いや~ ないですよ。へ~ あれも惑星なんだ」

 女神隊員は今日襲ってきた女エイリアンを思い浮かべ、

「あの人のダンナさんも土星に行ったのかな?」

「行くはずがないですよ。土星はガスの集まりのような星なんです。地面なんかないんですよ」

「あは、そうなんだ」

「女神さん・・・」

 海老名隊員の声色が急に変わりました。女神隊員は疑問に思い、

「ん、どうしたんですか?」

「私、怖い・・・」

「呪い石ですか?」

 海老名隊員は静かにうなずきました。海老名隊員は今日呪い石を使いました。呪い石を使えば赤い女の子が命を奪いに来る可能性があります。今日は赤い女の子は出現しませんでしたが、海老名隊員は心のどこかで女の子の出現を危惧してました。そんな恐怖が今さら表面化したのです。

 女神隊員はにっこりとして、

「大丈夫。そのときは私が守ってあげます。あの赤い女の子の矢は、私のバリアを破れないんですよ」

 海老名隊員は微笑み返し。

「ふふ、期待しますよ」

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