私が愛した男《ひと》 25

 ここで海老名隊員の胸のポケットのスマホが鳴りました。海老名隊員は嫌な顔を見せました。

「もう、なんなのよ、こんなときに!」

 海老名隊員はスマホを取り、その画面を見ました。そこには「隊長」の文字が。

「た、隊長?・・・」

 それを聞いて女神隊員はびっくり。

「え?」

 海老名隊員は電話に出ました。

「隊長!」

 スマホから隊長の声が。意外と健康そうです。

「あは、すまないな」

「ど、どこにいるんですか?」

「あ~ スマホの地図ソフトによると、三河山公園の駐車場だな」

「すぐに警察に通報します!」

「あはは、もう通報したよ。お前んとこに電話する前に通報した。悪いな、お前を1番にしないので」

 海老名隊員は泣きだしてました。

「隊長・・・」

「おいおい、そんなに泣くな。お前もテレストリアルガードの隊員だろ」


 さて、いったい何があったのでしょうか?

 隊長が乗ってたタクシーが襲われ、隊長とタクシーの運転士の顔にスプレーが吹きかけられました。襲った2人は女エイリアンの子分でした。もちろん宇宙人。

 吹きかけられたスプレー缶の中身は、数滴で死に至る恐ろしい化学兵器でした。しかも空気に触れると10秒ほどで無害な物質に変化してしまう都合のいい化学兵器でした。

 が、しかし、それは彼らの星の中だけで通じる話。地球人は違いました。事後に検査したところ、健常な地球人だったら一度は昏睡状態に陥りますが、30分程度で回復することが証明されたのです。つまり隊長もタクシーの運転士も死んではなかったのです。

 女エイリアンの子分はそうとは知らず、隊長とタクシーの運転士の身体をタクシーのトランクに詰め込み、タクシーを三河山公園の駐車場に放棄しました。

 彼らは周到に用意しましたが、それらはすべて水泡に帰しました。少し間抜けだったようです。

 なお、彼らが乗ってきた未確認飛行物体は、三河山公園近くの雑木林から発見されました。5つの死体が転がってたスタジオも、未確認飛行物体の中にありました。

 隊長は現場で警察の事情聴取に応じました。しかし、宇宙人が絡んだ事件はテレストリアルガード内での処理が可能。なので代わりのタクシーが来ると話半分でタクシーに乗って行ってしまいました。隊長から事情を訊いてた刑事さんは悔しそう。

「くそーっ、またかよ・・・」


 ここはテレストリアルガード基地。あたりは西陽のせいか、赤くなってます。

 3階建てのビルの1室。海老名隊員がスマホの電話に出てます。電話から隊長の声が。

「今病院だ。ちょっと時間がかかりそうだ」

 海老名隊員。

「え、まだ病院?」

 ここは病院の廊下。香川隊長が公衆電話に出てます。

「いつまでもテレストリアルガードの基地を空けておくわけにもいかないだろ。手っ取り早くひざの骨折を治してもらうために、今日は特別な治療を受けることにした」

 海老名隊員。

「私も行きますよ、病院に!」

「ダメだ」

「ええ、どうして?」

「お前、今日生理痛で学校休んだんだろ。基地でじーっと寝てろよ!」

 電話が切れました。ビルの中の海老名隊員は残念そう。

「もう・・・」


 夜になりました。ここはテレストリアルガード基地3階建てビルの屋上です。今海老名隊員が天体望遠鏡で星を見てます。あまり大きな望遠鏡じゃありませんが、それでも自慢の望遠鏡です。

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