私が愛した男《ひと》 17

 女神隊員は目を醒ましました。

「う、うう・・・」

 女神隊員は透明な飛行物体に吸い上げられていく女エイリアンに気づきました。透明な飛行物体はちょうど今女エイリアンの回収を終了させたところです。と同時に、エレベーターシャフト代わりの光も消滅しました。

「く、逃がすか!」

 女神隊員はその透明な飛行物体に向かって思いっきり右手を伸ばしました。そして指で拳銃の形を作って、数発光弾を発射。が、何にもヒットしません。どうやら逃げられてしまったようです。女神隊員は悔しがりました。

「ちっ」


 ここはテレストリアルガード基地3階建てビルの3階の一室です。今バーンという激しい音が響きました。机を叩いた音です。さらに

「いったい何やってんのよ!」

 という怒鳴り声。70代の白髪の女性がかなりのおかんむり状態。折り畳み式の長机を挟んで、女神隊員と海老名隊員が小さくなってます。なお、女神隊員の頭部ですが、ウィッグだけで特徴的な単眼を隠してる状態で、自動翻訳機のヘッドセットを装着していました。

 女神隊員はポツリと謝りました。

「す、すみません・・・」

 ちなみに、このおばあさんは地下整備場の長。みんなから工場長と呼ばれてる女性です。この工場長の指揮の元、ストーク号やヘロン号は日夜整備点検されてるのです。

 工場長は壊れた2つの格納庫を思い浮かべ、

「あの格納庫がないとストーク号もヘロン号も地上に上げられないの! わかってんの?」

 ここで傍らで座って聞いていた香川隊長が助け船。

「まあまあ、そんなに怒らないでくださいよ。テレストリアルガード基地内にエイリアンが侵入してくるなんて、完全想定外ですよ。それに第3の格納庫は無事だったから、ストーク号もヘロン号も地上に上げること自体、問題ないんじゃないですか?」

 が、これが逆効果。工場長の怒りの矛先は、今度は隊長に向かいました。

「あなただっていったい何やってたの!? テレストリアルガード作戦部門の隊長が昼ひなかに街中をほっつき歩いてたなんて!」

 女神隊員がそれに応えました。

「隊長はひざを骨折してまして、今日はその検査の日だったんです」

 しかし、その説明は工場長の怒りにさらに油を注いでしまったようです。

「黙らっしゃい!」

 工場長は女神隊員のウィッグに注目して、

「だいたいなんなのよ、そのふざけた髪型は?」

「あは、すみません」

 というと、女神隊員はヘッドセットを取って、ウィッグを取りました。すると特徴的な巨大な単眼が露わになりました。それを見て工場長は引いてしまいました。

「うう・・・」

 工場長はヘッドセットを被り直してる女神隊員に、

「い、いいからウィッグを被って!」

「はい」

 と応えると、女神隊員は再びヘッドセットを取って、ウィッグを装着しました。

 工場長は隊長を見て、

「ともかく今は、新たなストーク号とヘロン号を造ってるところです。予算がまったくない状況なんです。オペレーションルームと格納庫の再建がいつになるのかわからない状況なので、そのへんは覚悟はしておいてください!」

「わかりました」

 工場長はドアを開け、出て行きました。ドアが閉まるとき、工場長の感情が思いっきり籠ってたらしく、バーンと激しい音が響きました。女神隊員はその音に肩をすぼめました。

「ああ、怖かったぁ・・・ 桑原桑原・・・」

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