私が愛した男《ひと》 10
現在の香川隊長は女神隊員の顔を見て、
「その傭兵はあんたと同じ単眼だったんだよ」
女神隊員と海老名隊員は驚きました。
「ええ?」
「宇宙には単眼の人が多いのか?」
再び香川隊長の記憶の中です。香川さんはなんとか傭兵の身体を岩陰に収めました。傭兵はかなり苦しそう。仰向けのまま、まったく動きません。でも、口はきけました。
「あはは、この星の空気を
香川さんが岩陰からそーっと顔を出し、敵の方向を見ました。敵がどんどん迫ってきます。その数、100人以上。香川さんは顔を引っ込め、つぶやきました。
「万事休すか・・・」
それに傭兵が応えました。
「いや、まだ奥の手が残ってるぞ」
「えっ?」
傭兵はどこからか小さな布製の袋を取り出し、それを自分の胸の上でひっくり返しました。すると袋から小石が飛び出し、戦闘服の上に落ちました。傭兵はその小石を握りました。香川さんはそれを不思議そうな顔で見ました。
「それは?」
「ま、見てな」
傭兵は目をつぶりました。何か瞑想してるようです。すると香川さんの頭上にたくさんの黒くて半透明な物体が浮かび上がり、敵兵に向かって突進して行きました。その驚きの光景に香川さんは思わず声を発してしまいました。
「な、なんだ、これ?・・・」
香川さんはその内の1つを凝視しました。フードと一体になった黒いマント。右腕に持ってる武器は死神の鎌。その腕は骨。顔も骨。眼は単眼。その眼には瞳があるようです。香川さんはそれを見て、恐れおののきました。
「うう?・・・」
その直後敵部隊の方から阿鼻叫喚な悲鳴が響いてきました。驚く香川さん。
「え?」
香川さんは岩陰からそーっと顔を出すと、そこには屍がたくさん転がってました。なんと敵部隊が全滅してたのです。香川さんはびっくりするばかり。
「全滅してる? い、いったい何が起きたんだ?」
ぐったりとしている傭兵がそれに応えました。
「呪いだよ」
「ええ?」
「何人死んでる?」
香川さんは死体を数えようとしましたが、死体の数はあまりにも莫大。すぐにその作業を止めました。
「わからん・・・ とんでもない数だよ」
「50人くらいか?」
「いや、もっと・・・」
「100人以上?」
「いや、もっといるな・・・」
「あはは、やっちまったか・・・」
「え?」
傭兵は小石を摘まむように持ち、
「これは呪い石だ。この石を握って死ねと命じれば、相手は確実に死ぬ」
「ええ?・・・」
「ふふ、そんなバカなって顔してるな。けど、本当の話だ。ただし、無限に殺せるってわけじゃないんだ」
傭兵は視線をずらし、
「実は何人殺せるのか、誰も知らないんだ。100人殺せるのか、1000人殺せるのか?・・・」
「もし殺し過ぎたら?」
「赤いマントを被った小さな女の子が殺しに来るそうだ。赤い女の子が出現してないところを見ると、オレはまだ殺し過ぎてないらしいな。あはは・・・」
傭兵は小石を持つ手を香川さんの方に突き出しました。小石を手渡ししたいようです。
「これ、おまえにあげるよ」
「え?」
「オレはこれまで45人この石で呪い殺してきた。100人までは大丈夫だろうと勝手に思ってきたが、今日一日だけで軽~く100人突破しちまったようだ・・・ これ以上やるとオレの命は保証できないから、ここで所有者変更だ」
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